Vol..147/2010/4
「黄色やら、赤やら、ピンクやら」

 普段は週末の買い物客や外国人観光客でにぎわうサイアム・スクエア周辺には、約6,300人の警官が配備され、現場近くは激しい渋滞となり、インターコンチネンタル・ホテルなどもデモ隊の侵入を阻止するため警備を強化するなど対応に追われた。
 私は先週の3月27日とこの3日、2週続けて赤シャツデモを見物に行った。政治的なデモとはいえ、危険はほとんど感じられない。赤シャツデモが始まった頃は、いくつかのトラブルがあったようだが、デモ慣れし始めるとほとんどお祭り騒ぎにも感じる。
 外国メディアは、バンコク中が赤シャツデモの騒乱状況のような報道をするが、ちょっとピントが外れているような気がしないでもない。地元バンコク市民の多くは、またか、という感じで迷惑な顔はするものの、声を荒げようとはしない。
 私の主な取材場所、軍事政権が絶対的な権力を握る隣国ビルマ(ミャンマー)では、タイのように自由な発言やデモ行進は、命がけの行動である。そう思うと、相手をたたきつぶさない程度に、落としどころを見つけながら、意見の違いをぶつけ合うというシステムは、なんと素晴らしいことなんだろうと思う。
 もっとも、その後すぐにタイを出国し、ビルマ入りした私にはその後これら赤シャツデモと黄色シャツとピンクシャツの対立がどうなったのか分からない。

 

 

 赤、黄、ピンクの当事者たちは、どんな政治的な妥協を引き出しただろうか。政治的な妥協とは、それぞれが満足して納得する合意を意味するのではない。どっこい反対に、それぞれが同程度に不利益や不満足を感じ、相手方も自分と同じように満足していない、自分たちだけが特に損をしたのではないと感じることによって達成できるものである。それが政治の落としどころを意味するところである。
 そう思いながら、今はビルマ(ミャンマー)入りしている。さて、政治的に不自由なビルマを出てタイに戻ったとき、タイの政治がどんな風に落とされているのか、その成り行きをじっくり知るのが今から楽しみである。

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この原稿は4月8日にビルマ(ミャンマー)から送ったもので、タイのこれまでの情勢からは楽観的になっており、その後の展開は全くの予想外のことでした。あらためて政治の動きとは読めないものだと感じ入りました。
(宇田有三/4月11日現在)

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