Vol..145/2010/2
「それを言うことによって何を言う」

 2009年12月初旬から今年1月末にかけて、南アジアの東端に位置するバングラデシュに初めて訪れた。訪問の目的は、ビルマ(ミャンマー)からバングラデシュに逃れてきた難民取材である。バングラデシュの首都ダッカから飛行機で約1時間半、ビルマ国境が近いコックスバザールという町に飛んだ。
 コックスバザールは、知る人ぞ知る、バングラデシュでも数少ない観光地である。もっともバングラデシュ自体は、日本の人に観光地としてはさほど魅力がないらしく、あの有名なガイドブック『地球の歩き方』のバングラデシュ編は出版されていない。
 そのコックスバザールを有名にしているのは、世界最長と評される海岸線である。経済的に厳しいバングラデシュにあって、ベンガル湾に面した夕陽の美しい海岸線には、5つ星の高級リゾートホテルが建ち並んでいる。

 ビルマからバングラデシュに逃れてきた「ロヒンギャ」と呼ばれる人びと(難民)の取材に当たって、このコックスバザールを拠点に活動することになった。もちろん、そこはバングラデシュであるから、毎日の生活の中でバングラデシュ人=ベンガル人とやりとりすることになった。

 
コックスバザールでローカルバスに乗ると、乗客の乗り降りが多い交差点では物ごいがひっきりなしにやって来る。時には腕を掴まれて強要される。さて、その時、何を思うのか。自分が試されているような感覚に襲われる。
 


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