Vol..139/2009/8
「ジャーナリズムが存在する限り」(再・下)

 そんな写真は、現場に行って自分の感受性だけに合致する状況や、現象を写し込んだだけの撮影なのかもしれない。または、編集部や雑誌の企画意図に従って動くだけなのかもしれない。そこには、写真家自身の新奇さやオリジナリティーは排除される傾向にある。現場に入る前に考えられたルールや制作意図に従ってのみ、写真は「作られる」。そういう作られる現場では、時間的な制約も厳しいだろう。もちろん写真だけでは撮し手の意図が伝わらないことがある。だから、フォトジャーナリストは撮すだけでなく書かなければならない。

 企画に沿った取材の場合、現場に立った撮影者は「あっ」と感じる余裕がない。だから見ている側にも「はっ」とさせられない。それだから読者を説得できないのだ。また、どうしたら売れるか、そのことが優先される企画が多いように感じる。どうしたら写真が影響力を持つのかという発想は、そこにはない。

 
カンボジアの首都プノンペン郊外のスラム地区。首都を追い出された経済的に貧しい人びとがバラックで生活を続ける。HIV+(エイズ)を発症した男性が1人、十分な診療を受けることなく病に伏せる。

   


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