Vol..136/2009/5
「遠くはなれたエルサルバドル」

それは、西欧諸国では「東西冷戦」が終わった今、果たして世界はこれからどこへ向かうのか、現場主義だけでは捉えることのできない大きな視点を持つことが大事なのだと思い至ったことである。現場の撮影に力を置くのはもちろんのこと。だが、目の前の現象や現実だけに振り回されるだけのフォトジャーナリストは、私の目指す道ではない。鳥の目をもって空の上から地球を俯瞰し、蟻の歩みをもって地上を這い、出来事を肌で感じる。そういう感覚で問題に取り組みたかった。
 つまり、こういうことだ。
 中米エルサルバドルと日本とは、地球の全く反対側に位置する国で、両国にはそれほど共通点がないように思える。だが、歴史をちょっと振り返ると、この2つの国には深い繋がりがあることが分かる。2008年後半、米国の金融危機を発端に起こった経済危機は、一瞬にして世界に広がった。この100年に一度ともいわれる経済不安は、まさに1929年の米国ウオール街発の経済危機(「暗黒の木曜日」)を思い起こさせることになった。この当時の経済危機が、結果的に、第二次世界大戦に繋がったからである。
 日本は1932年、中国に侵攻し満州国を作った。だが当時の国際連盟は、タイの棄権をのぞいて、満州国を認めることはなかった。しかし、他の国に先駆けて、この満州国を世界で認めたのがエルサルバドルだったのである。ちなみに、日本もエルサルバドルも、軍部が国を司る国であった。

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終戦から10年以上を経ても、都市と地方の経済格差は広がるばかり。電気も水道もない村がまだまだ存在する(2004年)。

内戦時、エルサルバドルから米国に流れ込んだ若者がギャング化した。国外追放となったエルサルバドル人が自国に戻り、犯罪者集団を形成するようになり問題となっている(首都サンサルバドル、2004年)。
   


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