Vol..135/2009/4
「みる(後編)」

 

 次に挙げるのは左項の写真である。この写真はかつて、本連載でも紹介した画像である。
 ここは、タイとビルマ(ミャンマー)の国境にある難民キャンプ。夜明け直後、朝露もまだ乾かぬしっとりとした空気のなか、女の子がひとり竹簀造りの家の端で、大きな声を上げて勉強している。難民キャンプの中にも小学校〜中学校があり、まがりなりにも学校教育が続けられている。だいたいビルマの学校教育の基本は覚えることが中心で、暗唱にその多くの時間が割かれている。それゆえか、学校の復習といえば、声に出すということになるようだ。
 この女の子がなぜ竹壁を隔てたバランスの悪い横で暗唱しているのか分からない。わたしはただ、この光景が面白くてシャッターを切った。ある時、ふと気づいた。なんでこの女の子はしゃがんでいるのだろうか、と。特にそれに気づいた理由はない。だが、気になって、ビルマで撮した他の写真を見ていくと、ビルマ国内でも多くの人がしゃがんでいた。あちこちで、人びとはしゃがんでいる。市場でも、バス停でも、食事時でも。  今、日本でしゃがんでいる人といえば、コンビニの前で「ヤンキー座り」をしている若者くらいだろうか。でも、その昔、といっても30年ほど前だが、日本でもしゃがんでいる人を多く見かけた。

 ジャーナリストの本多勝一氏のエッセイに「しゃがむ姿勢はカッコ悪いか?」(『貧困なる精神第1集』、初出1973年)というのがある。

   


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