Vol..130/2008/11
「もし、平等ならば」

 この8日、ビルマの反軍政と民主化に関心を持つ人は、世界のビルマ大使館や中国大使館前で抗議運動を起こした(中国は、ビルマ軍事政権を支える最大の支援国であるからだ)。だが、その抗議行動のニュースも、予想通り、オリンピック報道や勃発したグルジアとロシア紛争の国際ニュースにかき消されてしまった。

 さて、オリンピック開会の8日、ここビルマの様子はどうだったのか。20年前の8月8日、軍の兵士と市民がぶつかり合った「ミニゴンの交差点」に行ってみた。予想通り交差点周辺には、自動小銃を持った武装警官が激しい雨の中、静かに佇んでいた。一般の市民は、その姿を横目に、あくまでも日常生活を続けていた(ように感じた)。
 もちろん外国人が観光客としてビルマに入国したとしても、この8月8日の緊張感を感じることはできない。また、5月にイラワジ・デルタ地帯を襲ったサイクロン「ナルギス」からの復興喧伝したい軍事政権は、その被害の実態を見ようとする外国人の入国を制限している。その入国制限は、一般の観光客へのビザ発給の制限という余波を引き起こしている。

 

 私の定宿もこの10日間、滞在客は私1人という有様である。雨季で、ただでさえ観光客が減る季節なのに、観光産業は大打撃を受けている。知人のツアーガイドは、生活が成り立たないと悲鳴をあげている。
 また、観光客の多くは、これまで4週間あった観光ビザの期間を3週間に減らされている(私はもっと短く制限された)。ラングーンからビルマ第2の都市マンダレーを経て、観光地のパガン(世界3代仏教遺跡の1つ)やインレー湖を巡るとちょうど3週間くらいで観光を終えることができる。軍政はあくまでも、この国の影の部分を見ることなく、お金を落としてくれる外国人だけを歓迎しているのだ。

 通報義務があるビルマで、外国人による行動は、観光地を外れていると目立ってしまい、身動きがとれない。そこで、この数年顕著になったのは、現地の人たちこそが、外国人の「偏った」フィルターを通さずに、自らの問題を世界に向けて発信し始めていることだ。デジタル機器の小型化と簡素化がそれに拍車をかけている。言葉の不自由な外国人がわざわざ取材に訪れるよりも、ビルマの民主化勢力は、雑誌・インターネット・衛星放送を駆使し、現地の生情報を世界に発信し始めている。

 

   


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