Vol..128/2008/9
地域をつなげる国境線・時代を分かつ国境線

 東南アジア諸国は、基本的に大陸の中に諸国が散らばり、隣国と直に接する。それ故に、国や国境線というものを、日本やオーストラリアよりも強く意識する社会だ。線のこちら側と向こう側。同じようで違う。違うようで同じ。私自身は、東南アジアの移動にこれまで飛行機を利用してきた。やっぱり、国境線を強く意識したことはあまりない。
 今から4年前、中米4カ国(グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア)を取材した。その時、国境越えは全て大陸間移動のバスを利用した。そのため文字通り、異国に入る度に国境線を意識せざるを得なかった。もちろん、出入国の手続きは地元の人と同じように、全て自分でする。
 中米は、南北の巨大な米大陸に挟まれた中に7つの国がひしめく。スペインによる植民地の後、ラテンの国に様変わりし、共通の言葉は全ての国でスペイン語である。食べ物も似通っている。が、国境線を越えると、やはり違うのだ。まず通貨が違う。グアテマラはケッツアル、ホンジュラスはレンピーラ、エルサルバドルはドルかペソ、ニカラグアはコルドバである。もちろん紙幣や貨幣も異なる。小さな地域の中に、同じようで異なる現実を経験する。

 確かに国境線は、複数の国を隔てる。だが、実はこの目に見えない線は、同時にそれぞれの国々をつなげてもいる。つまり、「境界線というのは、境界を接している間にだけしか成立しないからだ(内田樹)」。そうなのだ。例えば、タイとカンボジアは線で隔てられることによって繋がっている。一方、日本とカンボジアは両者の間に境界線がないため、まったく繋がっていない。


 
ホンジュラスからニカラグアを隔てる国境線の川。地元の人々は、国境間のバスを降りて徒歩で橋を渡り、入国審査を受ける。

   


This site is developed and maintained by The Perth Express. A.B.N.29 121 633 092
Copyright (c) The Perth Express. All Reserved.