ビルマでは昨年9月末、19年ぶりに民主化デモが起こった。その様子は世界中で伝えられた。さらに今年5月、未曾有のサイクロン「ナルギス」がビルマのデルタ地域を襲った。その被害の死者・行方不明者は合わせて14万人を超えると推定されている(一説にはその数倍ともいわれている)。
この2つの大きな事件報道と災害報道で顕著になったのは、従来の報道と違って、現地の普通の人がデジタルカメラやビデオを使って、現地発のニュースを世界中に発信し始めたことだ。これは画期的なことである。デジタル革命は、実は情報統制の厳しいビルマのような軍事政権下でこそ大きな力を発揮し始めているのかもしれない。
メディアのデジタル革命が起こっている。言葉も自由に操れない外国人が、潜入もどきをしながらニュース取材をする時代は終わりに近づいている。現地のビルマの人が、世界に向けて、自分たちが大切だと思うこと、知って欲しいと思うことを自らの考えや手段で報道し始めたからだ。インターネットを使い、メールで、ウェブで、だ。或いは情報を記録したCDやDVDを国外に持ち出すルートを開拓している。もちろん、そこには軍事政権の厳しい統制と取り締まりはある。その制限を超えて情報が流れ始めたのだ。この動きはもはや止めることはできないだろう。外国人の目や感覚というフィルターを通した情報やニュースではない。現地の人の生の声が世界に流れ始めたのだ。
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メディアの世界が変わりつつある。「現地発」のニュースが一般化するという趨勢は数年前から感じ取っていた。それは、例えば、タイで生活してみるとよく分かる。タイの若者のほとんどは、デジタル技術を使いこなし、ウェブやブログを使って、自分の思うところを思う存分、国内向けに或いは海外向けに発信しているからだ。
だが、である。
それでも外国人が現地に入って取材するという余地はまだ残されていると思っている。一体、それは何であるのか?その答えは、逆説的に聞こえるかも知れないが、それこそ現地に入らないと分からない。外部から入った人でしか捉えられないものがきっとある、と(勝手に)信じている。
だから無理をしてまでその場に足を運ぶのだ。
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