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第31話 「鏡」 (最終回)

 目的の倉庫はコンプレックスの一番奥にありました。僕は案内板の前で「ここで待っていて下さい」とドライバーに告げてから、コンプレックスの中に入って行きました。
 レンガの壁に沿って100mほど進むと、道はT字路になって左右に分かれていました。案内板の指示に従って右の私道に入ると、50mほど先に赤と青の非常灯を点滅した2台のパトロールカーが、サイレンを消したまま私道を閉鎖しているのが視界に飛び込んできました。
 僕はひざの震えを抑えながら、パトロールカーの手前に張られた立ち入り禁止を意味する白と濃紺のテープの境まで進んで行きました。
  「聞こえた銃声は2回です。」
 開いたままのパトロールカーのドアの前で、ここのコンプレックスの守衛らしい男が、制服の警察官の質問に答えていました。車内から雑音に混じって警察無線のやり取りが続いていました。

 

  
 現場からの報告によると、“けが人は死亡を含む複数の模様。現在、シティイースト3チームが引き続き調査中”でした。
 遠くでサイレンの音が聞こえ始めました。次第に近づいて来た救急車は2台でした。2台の救急車は、立ち入り禁止テープに鼻をつけるようにして停車しました。
両側の扉が開き、救急隊員があわただしく倉庫の中に消えて行くのを見届けながら、僕はもう自分を抑えることができませんでした。