“ジェザはかならず自分の女に運び屋をさせる” ミミの言葉が、さざなみのように心に広がったまま残っていました。
「MORIO、世の中にはね、自分のかなわないことの方が多いっていう法則があるのよ。その辺を見極めて無理しないで生きていくと、けがも少ない気がするわ。」
キャシーズは、珍しく暇でした。これで掃除の仕事でもたまっていれば気も紛れるのですが、こんな時に限って夕方から降り始めた雨のせいか、客足は途絶えたままでした。
ジェザにしてみれば、大事な彼の客を全て知っているMADISONをそう簡単に手放すはずはありませんでした。そして、もしも僕がこのまま進んで行けば、そのうち大変なことになることぐらいは、わかっているつもりでした。それじゃあ、ミミが言っていたように無理をしないであきらめる方がいいのでしょうか。
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見えてきた背中の後ろの世界が、自分の想像をはるかに超えた真っ暗闇だったことに、僕は動揺を隠せませんでした。相手が凄すぎて自分ひとりの力ではもうどうにもならないということも事実でした。かといって、まさか僕のような不法滞在者が警察を頼るわけにもいかず、いい考えも思いつかないままにその日の仕事を終えて、明け方バチェラーに帰ったのでした。
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