バチェラーユニットに戻ってみるとMADISONがベッドの上で静かに寝息を立てていました。ゲンキンなものでこうしてMADISONを目の前にしてしまうと、今日キャシーズで働きながら、ああでもない、こうでもないと考え続けていたことが一瞬のうちに吹き飛んでしまい、すぐにも彼女の隣にもぐりこみたいという衝動にかられました。
 気を取りなおして僕はキッチンに向かうと、とりあえずお湯を沸かそうと思いました。ガスレンジに火を付けてから水を入れたミルクパンをその上に置きました。そうしておいて、僕はミルクパンの中を覗き込みました。
 ただ、沸点に近づくにつれて空気に変わりだす水の様子を見ているのが好きだったのです。細かい泡が吹き始めてからコツコツ言い出して、最後は空気に変わる様子を見ていると、


 自分の人生にも沸点があって、それを境に大きく変われる気がして勇気づけられるのでした。
 気持ちが落ち着くに従って、ここ数日の間に知ったMADISONについての情報を頭の中で整理してみることにしました。トイレに捨ててあったストローから、チャーリーの予想通りMADISONが何かのドラッグを使っていることは確かでした。
 偶然見てしまったあの夜のことから、MADISONには特定の男がいるらしいことがわかりました。ジェザと呼ばれるその男はキングスクロスに住んで、ドラッグの運び屋を自分の女、すなわちMADISONにさせているらしいことも分かりました。あの緑のスポーツカーは、そのための道具だったのでした。ここまでが全部悪い情報でした。
   


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