物音に気づいて振り返るとMADISONが立っていました。背後でいつのまにか空になって炊きつづけられていたミルクパンがカチカチ言い出していました。
 僕はよろめくように体を投げ出してきたMADISONを受けとめながら、後ろ手でレンジの火を止めると、抱きとめた彼女のからだを抱えるように、ベッドまで歩いていきました。
 両腕の中の暖められたミルクのにおいのする柔らかい肌が、僕を呼んでいるのがわかりました。
 「MORIO、またいっしょに死んでくれる?」

 MADISONの緑の瞳が燃えるように僕を見つめていました。
 ちょっと意味が違っていましたが、彼女にも僕の考えていることがわかる時があるようなのでした。
 目覚めると夕焼けが部屋の床を染めていました。狭いベッドの上で互いに背を向けたまま眠り込んでしまっていたようでした。

 オレンジ色の光の中で、背中の後ろに広がっていたはずの真っ暗闇はもうどこにもありませんでした。代わりに彼女の柔らかいぬくもりが、醒めた背中を包み込むように暖め続けているのでした。

つづく

   


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