僕は出来るだけジェザという言葉が不自然に聞こえないように注意しながら口にしたつもりなのですが、ミミは明らかに驚きを顔に表しながら真偽を確かめるような目を僕に向けました。それから少し考えるようにしていましたが、やがてグラスに残っていたワインを一気にのどに流し込むと、言葉を選ぶようにして話し始めました。
 「MORIO、人には言わないって約束よ。ほら、あの男ハンサムだしお金も力もあったから。」
  「でも、そいつはドラッグの売人なんでしょ?」
  「もちろんそうよ。ドラッグだけじゃないわ。本当はもっと汚いことにも関係しているって噂よ。でも、はじめはビジネスマンを装って近づいて来たわ。通い詰めて来たっていうのかしらね。わたしみたいにお金に困っている女をいつも狙うの。それで、気持ちがあいつの方にいってしまってから、周りも気がついていろいろ注意してくれるようになるのだけれども、もう手遅れっていうか、

耳に入らなくなっちゃっているのよね。」
  ミミの話では、そうやって親しくなってからドラッグを少しずつ一緒に使うようになり、ナイトクラブでもどこでも思いっきり遊ばせてくれるものだから、女の子の方もそのうち一旦覚えた蜜の味が忘れられなくなって、気がついたらジェザのいいなりになってしまうのだということでした。
 「MORIO、もしもその子がグリーンのポルシェに乗っているようだったら、悪いけどもう手遅れだと思うわ。」
  「どうして手遅れなの?」
  胸騒ぎを覚えながらミミを見ると、「やっぱりそうなのね」と彼女は動かしていたナイフの手を止めて僕を見つめ返しました。
  「あの車はね、運び屋の車なの。ジェザは必ず自分の女にそれをさせるのよ。もうひとつ、ここが大切なんだけれども、運び屋を任されるって事はね、結局ジェザの客をみんな知ってしまうってことになるのよ。」

つづく

   


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