冷めたパスタが目の前のテーブルの上に置かれていました。
ロ−ソクの芯が音を立てて燃えていました。
言葉がありませんでした。
もちろん、そういう予感めいたものはありましたが、こうやって目の前に事実を突きつけられてしまうと、身もふたもありませんでした。こうしている間にも、2人で少しづつ服を脱ぎあう儀式が始まっているのかと思うと、もういてもたってもいられませんでした。 僕は勘定を済ませると、まっすぐに2人の消えたテラスハウスの方に走って行きました。そして、怪しげな明かりのもれる2階の窓に向かって、無我夢中でMADISONの名を2回叫びました。そのあと、少しの間辛抱して立ち止まったまま様子をうかがっていましたが、部屋の中が何も変わっていないらしいことを確かめると、
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さっき歩いてきた駅に続く坂道を目立たないように早足で、決して振り返ることなく戻って行きました。
その晩も次の一日も、僕はつきあってもいいと言っていた彼女の言葉を信じて、ひとり部屋で過ごしました。彼女に僕の声が届いていたのは間違いのないことでしたから、すぐにはあの男のもとを離れることができなかったとしても、翌日には僕を訪ねて説明してくれるにちがいないと勝手に期待していたのでした。
けれども、その日も次の日も彼女はやって来ませんでした。みじめな蜘蛛男、ふと、そんな言葉が思い浮かびました。狭い部屋の中でじっと息を潜めるように、女の言い訳を待つ、自分はみじめな蜘蛛男に違いありませんでした。
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