もうひとつ、一人じゃない夜がこんなに暖かいということも、今夜初めて知ったのでした。

 翌朝、目覚めると隣にいたはずのMADISONの姿が見当たりません。どこかへ行ってしまったのかと少しあわてましたが、入り口のドアには内側からカギがかかったままでしたし、トイレかシャワーでも使っているものと考えて、しばらくベッドの上でじっとしていることにしました。
 少しして、濡れた髪の毛をバスタオルでごしごしやりながら、見覚えのあるTシャツとトレーニングパンツを身につけたMADISONが浴室から出てきました。

 「借りるわね。」
 「もちろんいいけど、それ、何処にあったの?」
 「そこの箱の中。」
 MADISONが指差す先に、入り口の脇の段ボール箱がありました。
 「MORIO、ドライヤ−持ってる?」
 そう口にしてから、急にMADISONが白い歯を見せて、笑い出しました。
 僕はほとんど“まるぼうず”のような頭をしていましたので、ドライヤーなんて必要ないに決まっていたからです。
 知らないうちにすっかり片付けられていた床の上に、澄んだ朝の光が長い足を伸ばしていました。その光をお祝いするように、向かいの屋根の“笑いカワセミ”がけたたましい声を上げていました。

   


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