撮影が終わると、撮影クルーたちはあわただしく迎えにきたバンに乗り込んで、どこかに走り去って行きました。周りで眺めていた人たちも、バンが走り去るのを見計らって、次第にどこかにいなくなって行きました。僕はころあいを見て港をあとにすると、誰もあとに付いて来ていないことを確かめてから、急いでバチェラーに帰りました。
部屋に戻ってから一息つくと、少し冷静になってきました。そして、これは大変なことになってしまったと思いました。こんなことで有名になってしまったら、本当に日本に返されてしまうに違いないと思いました。それにしても、本当に冗談じゃないと思いました。
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ただ、そっとしておいて欲しかった。もう少しだったんです。もう少しで、自分の中の何かがはじけるような予感が、あったのです。そうしたら、何かをつかんで新しく生まれ変われると思っていたのです。
一方で、でも、ちょっと待てよ、とも思いました。これはたちの悪い、いたずらなんじゃないか、縫い目を入れただけのあんな簡単なことでアーテイストと騒がれるわけないじゃないかという気持ちも、確かにありました。
とにかく、こうして悩み始めてもなんの解決にもなりませんし、うちにはテレビももちろんありませんでしたから、彼らの言っていた夕方6時のチャンネル17のニュースを、どこかで確かめてみようと決めました。
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