僕のような社会の脱落者(これは、最後に成田から父に 電話したときに言われた言葉です。そして、海外にいる日本人は全員日本社会の脱落者だと言っていました)から眺めてみると、世の中の人って本当に冷たいと思うんです。
MADISONを買っていく男達について考えてみても、日頃、彼らの抱えているコンプレックスとかストレスとかを、彼女の体の中に捨てていくことによって(例えば、うんといやらしくあつかってみたり、あるいはうんと乱暴に扱ってみたりすることによって)、彼らの善良な市民としてのバランスが保たれていると思うのです。
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いったん、世の中の外側に弾き出てしまったMADISONには、そのへんの人間社会の本当の顔が、もろに見えてしまっているはずなのです。こんな風に言い換えてもいいと思います。ほとんどの大人達が興味を持っていることは、人を出し抜いて手に入れる不動産や、わがもの顔で割りこんでも怒られない高級車を手に入れること、あるいは自分達の息子を
将来、医者や弁護士にすることなどなのです。
彼らにとっての医者とは、すごい美人と結婚できて、海沿いの一等地の家を買える力があって、そして欧州車に乗りながらライオンズクラブやロータリークラブの慈善事業に寄付のできる人達のことを指すのであって、アフリカの水害の地にとどまって、難民の治療に全てをかけているような人の
ことを指すものでは決して無いのです。
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