「僕たちの生きているその契約社会の中では、あったかくて、やさしくて、惚れた男のためならば何もかも差し出してしまうような気前のいい女の子の方が、結局、騙されやすくって、傷つくこともきっと多くって、なんか、ものすごく不公平な気がするんだけどなあ。それじゃあ、いい人たちの方がこの世の中、いつも苦労や悲しみをしょって生きていかなければいけないという‘掟’があるみたいで、やりきれない気持ちになってしまうんだけどなあ。」「MORIO、はっきりさせとくけど、だからキリストは十字架をしょっているんじゃないの?
偉大な人は、社会の下に向かって旅していくってことを彼は象徴し続けているんじゃないの?」
そこまで話すと、まるで何かを振り切るようにミミは急に立ち上がりました。そして、
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いつものように少しの間、鏡に向かった後「また、後で話そうね」と優しく微笑んでから、賑やかになりだしたホールに消えていきました。
僕は、ついさっきまでSEXは気持ちのいいこととばかり思っていました。ところがミミと話しているうちにSEXの向こうから突然、神様がやってきてしまったのです。あるいはSEXの向こうに神様が立っていたと言い換えてもいいです。
とにかく、僕も清掃の作業に戻らなくてはいけない時間になっていましたし、女性を踏み台にするような生き方だけはやめようと心に決めて、休憩所のイスから立ち上がることにしました。そして、いつものように使ったシーツを集める作業から始めてみようと思いました。
今城さん、やっぱり僕には掃除のことしか解らないのかもしれません。
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