そんな暗い生活にどっぷり漬かっているうちに、自慢じゃないですが飲めなかったはずの酒も飲めるようになりました。間借りしていたバチェラーの近くにパブがあって、しまいに午前中からそこでビールを飲む生活が日常になってしまいました。
 ある時、そこでものすごいけんかがあり、腹を殴られた方の人が床にさっきまで食べていた胃の中の物を全部吐き出してしまいました。僕はとっさに汚れたカ−ペットの上に水を撒きました。ゲロが水に浮くようにしておいて、デッキブラシを借りて払うようにゲロを取り除いていきました。仕上げは濡れ雑きんで叩くようにシミを取りました。

 僕は久しぶりにいい汗がかけて嬉しかったです。気がつくと周りの人が黙ったまま僕のしていることを囲むようにして覗いているではありませんか。僕はとっさにまた何かへまをやったなと思いました。それで、急いでバケツの中身を捨てに行こうとしたところ、急に誰かに腕をつかまれ、もう逃げられないと思い、そこにしゃがみこんだ途端、周りの人達から拍手が湧き起こりました。また、けんかが始まったのかと思ったらそうではなくて、どうもみんな僕の掃除のことで喜んでくれていたみたいなのです。
  腕をつかんだ人は、その店のオーナーでした。

   


This site is developed and maintained by The Perth Express. A.C.N. 058 608 281
Copyright (c) The Perth Express. All Reserved.