私たちが開拓地から退去する前に、父にはやらなければならないことが数多くあった。当時の風習に従って、クリームに対する最後の小切手で商人たちへの借金を清算したことを父はとても誇りに思っていた。
悲しいひとつの務めとして、飼犬のスポットを処分しなかればならなかった。足が萎え、長い間家族に愛着し続けたスポットは新しい家には馴染めそうになかった。最後の晩、スポットは姿を消した。私の頭の中は、都会に向けて旅立つことと、パースにいる母に再会する期待でいっぱいであったが、その夜遅くに父が友人と連れ立って部屋に入ってきたことを今でも覚えている。全くの後知恵ではあるが、
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その友人の奥さんが私たち子供たちがトランプ遊びに気を取られるようにしたのだろう。父の重々しくうな垂れた顔と、大人たちの間で交わされた目配せを覚えている。後々まで、その夜の出来事と私たちの生活からスポットの存在が消えたことを関係付けられなかったが、忠実な愛犬をその手で殺す父の辛さを今にして思い知った。
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