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明日は来る It wasn't my day today, but tomorrow will come.
Vol.177/2012/10

第6回「決断」


言葉


 リーグ戦を4位で終えた山田のInglewood Unitedは、9月15日に行われたプレーオフ「Eliminational Final」で、昨季チャンピオンのPerth SCと対戦した。

 8月に入り、リーグ戦も終盤に差し掛かったところで、監督のGraham Normantonより「残りの試合は攻撃的な布陣でいく」との説明を受け、以後、出場停止も含め最終試合までの4試合、山田はベンチスタートとなっていた。守備を売りにしている山田は、チームの戦術ならばということで理解はしたが、当然ながら納得はしていなかった。大一番となるこのPerth SC戦も、ベンチスタートだった。

 試合は先制され、後半に追加点を奪われる。Inglewood Unitedにとってこのプレーオフは、勝たなければ後がない。後半32分に何とか1点を返すも、1‐2の状況では、なんとしてでも同点に追いつかなければならない。監督は、交替枠で攻撃の選手を使った。
 山田は、いつ声がかれられてもいいようにピッチの横でウォーミングアップを何度も何度も繰り返した。しかし、オレンジ色のビブスを脱ぐことなく、試合終了の笛を聞いた。

 「これで、終わり…、終わりなんでしょうか」
 天を仰ぐような仕草から目線を足元に移し、山田は誰に聞くわけでもなく、そうつぶやいた。ホイッスルは、試合終了の合図でもあったが、3月24日に開幕したInglewood Unitedの2012年シーズン終焉の宣告でもあった。当然、監督をはじめ、選手や関係者全てが、そのホイッスルの意味を飲み込むまでに時間を要したが、何もかもが初めてだった山田にとっては人一倍、時間が掛かった瞬間でもあった。

 山田は、3月4日に初めて練習に参加し、リーグ戦22試合中、トップチーム(一軍)での出場は13試合。11試合目以外の4試合目から最終22試合目の計18試合がトップチームのメンバー表に名を連ねた。スターティング・メンバーで出場は5試合。また、準決勝で破れたカップ戦では、初戦からの全4試合に出場。3試合でスターティング・メンバーとして出場した。