Japan Australia Information Link Media パースエクスプレス

明日は来る It wasn't my day today, but tomorrow will come.
Vol.177/2012/10

第6回「決断」


 9月27日、クラブのオフィスで、山田は監督と握手を交わした後、今後について話をした。リーグ終盤から出場時間が減り、最後の試合にはピッチにも立てなかった。その山田を監督はどう評価しているのか、興味深くもあったが、「一時期、(試合に)出られない時もあったが、来期はもっと(プレー)できると思う。パースで他のチームを考えているのなら、ウチでプレーして欲しい。来季に向けての練習開始は、12月9日からだ」と言われた。給料が発生するセミプロにおいて契約に直結する、期待が込められた評価だと解釈できる。山田にとっても、悪い話ではなかった。しかし、ビザの関係上、滞在できる期間が限られている山田にとって、やはりセミプロではなく、プロリーグ(Aリーグ)でプレーしたいといったことが、頭の中の大半を占めていたようだ。そこで山田は「パース・グローリーの練習参加を推薦してもらえないでしょうか?」と問うも、「グローリー側からの申し入れがない限り、それは難しいだろう。俺の練習の方がいいさ」と笑顔で抱き寄せるように監督は山田の肩を叩いた。
 山田が監督にそう申し入れたのも、西オーストラリア州の選手育成に力を注ぐため、プロリーグ(Aリーグ)の1つ下の階層となる州リーグに所属するInglewood UnitedとAリーグ所属のグローリーは、一部業務提携をしているからだ。州レベルの選手の底上げが、グローリーやAリーグ、将来的にはオーストラリア全体のレベル向上につながることは周知のことで、Inglewood Unitedのクラブ首脳陣はグローリーとパイプを持ち、常に情報交換がなされている。山田について、最初にパースでコンタクトを取った知人のグローリー関係者もInglewood Unitedを紹介した理由は、そこにある。

 山田は9月初旬に、Aリーグ開幕に照準をしぼるグローリーの練習相手となったInglewood Unitedの一員として、練習試合を行っている。その試合を振り返り、「やれたし、やれると思う」といった印象を抱いている。つまり、Aリーグでもプレーできるといった実感をもっていたのも理由の一つとして、監督にグローリーの練習参加を相談した。そして、リーグ終了後の山田からのメールでも「次にここでのサッカーの環境を求めるなら、グローリーでやらせていただくしかないと思っています」といった強い思いが寄せられた。それを受け、Inglewood Unitedを紹介してくれた前出のグローリー関係者にもう一度、山田について聞いてみることにした。