Vol.173/2012/6
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3月24日の土曜日、リーグ戦が開幕する。第1戦目は、3‐2でチームは勝利を収めるも、日豪間のやり取りを必要とする山田の選手登録は完遂されず、観客席で戦況をうかがった。そして29日、待ちに待った選手登録が完了し、晴れて公式戦に出場する許可を得る。31日のリーグ戦2戦目は、リザーブチームでの出場を言い渡された。
良く晴れたグランドに、黄色と青色のユニフォームに身を包んだ山田がいた。リーグ戦2戦目のリザーブチームでの出場は、慣れ親しむディフェンダーではなく、ストライカーのポジションだった。勝手が違うポジションで戸惑いながらプレーする山田。不完全燃焼で、自分の思い描くプレーができなかった山田のプレーにチーム首脳陣が誘発されたのか、リーグ戦3戦目はリザーブチームのスタメンからも外れた。トップチームで頭角を現し、その上のAリーグに進むという目標を掲げているにもかかわらず、この事態に山田も首を傾げるしかなかった。
4月14日、リーグ戦4戦目もリザーブチームでの出場かと思っていた矢先、「トップのチームに加われ」との指示を受ける。先週のリザーブチームのスタメン落ちが何だったのか…。一つ考えられることは、監督のGraham Normantonが2週間ばかりチームを離れていたので指示系統が違うところからきていたが、監督が戻ってきたので変化が生じたのかもしれない。“プロ”が付くサッカーの世界で、コーチと選手との関係は、実力や能力とは全く別次元で働くこともある。
通常、毎週土曜日に行なわれるリーグ戦の直前の練習日にクラブハウスのボードへ、試合出場のメンバー表が張り出される。山田の名前はここ数試合、トップチームとリザーブチームの両方に記載されていた。リザーブチームで試合に出場し、トップチームではベンチスタートとなる。4月21日のリーグ戦5戦目もリザーブチームの試合に出場し、後半早々に交替。トップチームでは、ベンチに入るも試合への出場機会はなかった。
週末行なわれるリーグ戦とは別に、トーナメント方式で戦われるカップ戦が4月25日に行なわれた。それに先立ち、山田から「リーグ戦と同様、トップチームとリザーブチームの両方にエントリーされていました。でも、トップチームの試合を観に来ていただけたら嬉しいです」といった内容のメールが届いた。文意から、揺るぎない自信を感じた。後々聞いてみたところ、トップチームでの出場をコーチから確約されたわけでもなかったが、実際、見事トップチームでの出場を果たしたのだ。トップチームでの出場は、これが初めてとなる。プレー時間は後半の24分間で、全部で7回、ボールに絡んだ。大きな一歩を踏み出した。山田は「カップ戦だったので、次はリーグ戦でトップチームの一員として出場したいです」と意欲を表した。
そして、4月26日の木曜日、28日のリーグ戦6戦目の張り出されたメンバー表には、山田の名前はトップチームだけにしか書かれていなかった。