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【新型コロナウイルス関連】パースの日本人歯科医師に伺った ― 正確な活きた情報を知る


 

西オーストラリア州において歯科治療は、新型コロナウイルスの感染防止のため3月23日から急患のみの対応となっていたが、4月の下旬から感染者数が減少したことを受け、4月25日からのアンザック・ホリデーの連休明けとなる4月28日から手術を含む一部の歯科治療が可能となった。ここでは、パースの日本人歯科医より伺った医療現場の正確でかつ活きた情報をお届けする。
 
新型コロナウイルスがどのように感染されるかは一般的に飛沫感染、接触感染と言われているが、くしゃみ、咳、つばなどの飛沫や、手に付着したウイルスが口や鼻を触る接触と、どちらも口腔からの感染が主となっている。その口腔の診察を行う歯科治療は、いわば感染の最前線にいると言っても過言ではない。いまだに世界中で新型コロナウイルスのパンデミックが猛威を振るう中、医療従事者には多くの人から感謝の意が述べられているが、歯科医師もその一人だ。しかし、命を懸けて患者と向き合いながらも、SNS等で間違った情報も流れ出ている。ここでは、パースの日本人歯科医として活躍されている土谷章子さんに今だからこそ、正しく、そしてリアルな情報を伺った。

インタビュー:5月5日(火曜日)/写真:全てイメージ

 
質問 1)
オーストラリア国内において今(5月5日現在)でも不要不急の外出は禁じられていますが、あの歯の痛みは“我慢にも限界”があり、痛み出したら治療は絶対必要となると思います。ただ「歯科治療は口の中を触れる、触れられることも多いし、他の治療に比べて感染リスクが高い」のでしょうか?

土谷さん:「他科に比べると歯科は、治療中の患者さんと歯科医師や助手の距離が近いため、感染リスクは高いと言えると思います。ただ、どちらかというと、患者さんから歯科医師や助手といったスタッフへ感染するリスクの方が、患者さんから患者さん、またはスタッフから患者さんへ感染するリスクよりも高いと思われます」

質問 2)
歯科の病気は、予防・早期発見・早期治療が原則と聞きますが、痛みなどがない場合はこの事態なので治療は自粛した方がいいのでしょうか?

土谷さん:「3月下旬から政府により、急を要する治療以外の診療を禁止されています。最近少し規制が緩くなりましたが、それでも水が飛び散る可能性のある治療は避けるようにと言われています。そのため、今の段階では、クリーニングや痛みのない歯、歯肉の治療などは避ける医院が多いと思います。ただ、3月下旬に禁止された規制もむこう数週間以内になくなると考えられており、その後は通常に戻ると思われます。規制が解除されたらすぐ、治療や、もし時期が過ぎていたら定期検査、クリーニング等を開始されるとよいと思います(インタビュー:5月5日)」

質問 3)
治療中に噴射された水滴などが、細菌を撒き散らす可能性はあるんですか?

土谷さん:「患者さんが感染されていた場合、その方の口腔内に注水されて飛び散った水滴や唾液には、ウィルスが含まれている可能性があり、感染源となり得ると思います。ただ、歯科医院では今回の新型コロナウイルスの流行とは関係なく、常に“全ての患者さんは感染症を持っている”という前提で、器具の滅菌や診療用チェア、台などの消毒を行い、感染防止に努めています。そのため、次の患者さんが診療室に残っている水滴などから感染する可能性は低いと思います」

質問 4)
4月29日から一部の歯科治療が可能になりましたが、ウイルスに感染した疑いのある患者の治療制限は行っているんですか?例えば、来院の前に電話で「熱はないですか?」と受付の方が聞くなど。

土谷さん:「受付では、来院された方全員に渡航歴や新型コロナウイルスによる感染症の症状の有無を確認させて頂いております。感染している可能性のある方は、病院の中にある歯科にお願いすることになっております」

質問 5)
コロナ禍の中で、歯科医師として普段とは違う心掛けのようなものはございますか?

土谷さん:「歯科医師として普段から感染対策は強く意識しているため、診療において今回特別に注意しているのは政府のガイドラインに従い“今治療する”か、“後で治療する”かを選別することくらいです。また、患者さんや医院スタッフに感染させないために、自分自身が感染しないよう気を使ってきました」

質問 6)
働かれている医院で医療物資が不足しているといったことはあるのでしょうか?

土谷さん:「当院では事前に十分な在庫を確保しておりましたので、診療に必要な物が不足するということは今のところございません」

質問 7)
最後に、家にいる時間が長い今、食べることが楽しみの一つという人も少なくないと思います。そんな時の歯のケアーについてアドバイスを頂けますか?

土谷さん:「ダラダラと食べ続けず、時間を区切り、いつまでも口の中に食べ物が入っている状態を避けることが大切です。1日2回の歯磨き、1日少なくとも1回のフロスを毎日続ける。特別なこだわりがなければ、フッ素入りの歯磨き粉を使用されることをお勧めします。ちなみに、フロスをした後に歯を磨いた方が、その逆よりもきれいに磨けるという実験結果が出ているので、ぜひ試していただきたいと思います」
 
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  【インタビューに応えてくれた日本人歯科医師の土谷章子さん】
2002年 日本歯科医師免許取得、千葉大学医学部付属病院勤務、千葉県・鹿児島県内歯科医院勤務
2014年 オーストラリア歯科医師免許取得、パース市内歯科医院勤務
2017年~現在 North Beach Dental勤務

 

  【土谷さんが勤める歯科医院】
North Beach Dental ノース・ビーチ・デンタル
住所:Unit 1, 118 Flora Tce, North Beach WA 6020
電話:08 9447 1514
Web:northbeachdental.com.au
Email:admin@northbeachdental.com.au







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