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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.193/2014/02

「抗いの彷徨(3)」



団員の日常風景を写真に撮るというプロジェクト

写真を勉強し始めた頃、米国ボストンにやってきたサーカス一座に頼み込み、団員の日常風景を写真に撮るというプロジェクトを始めた。その時の一枚。サーカスにやってきた女の子が入り口でパンフレットに見入っていた。

 今から約四半世紀前、写真を勉強し始めた1990年当時、使っていたフィルムは白黒フィルム(モノクロフィルム)であった。大方の人は、特に眼に障害がない限り、色のついた世界に生きている。そんな世界でモノクロ写真を撮るとは、色彩ある事物に目を向けず、事物の関係性や陰影、写真の構図などに目を向けることでもあった。私は当初、プロらしい見栄えのある構図を考え、人と人や人とモノとの位置関係のみに注目していた。私がその時、モノクロ写真から学んだことは、深みのあるモノクロ写真とはいかにグレートーン(灰色の階調)を表現するかということであった。
 モノクロ写真の巨匠といえば、米国人のアンセル・アダムスという写真家がいる。彼は、〈 白を〔10〕〜 黒を〔0〕 〉とする基準で「ゾーンシステム」という手法を生み出し、モノクロ写真を11階調のグレーで表現した。また、写真関連用品で世界のトップであったコダック社は20階調のグレースケールを生み出した(コダック社はその後、デジタル移行に失敗し2013年破産)。