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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.189/2013/10

“On the Road”『オン・ザ・ロード』



ペンギンブックス版“On the Road”

いつまでも手放せない一冊、ペンギンブックス版“On the Road”。

 日本でもようやくこの夏、『オン・ザ・ロード』という映画が封切られた。米国の小説家ジャック・ケルアックが書いた小説“On the Road”を映画化したものだ。そのニュースに接した私にとって、ほんの一瞬だが、いよいよ映画上映となったか、という気分がわき起こった。ウェブ上からその映画の紹介文を引用してみる(抜粋)。

 ケルアック、ギンズバーグ、バロウズたちは、1950年代のアメリカのビート・ジェネレーションといわれる世代を牽引した若者たちである。ケルアックは、アメリカ中を旅し、その自伝的小説「路上」を書く。小説で描かれた旅は、酒やドラッグ、セックスに溺れたり、ビーバップを聴き、踊り、享楽にのめり込む旅だが、ケルアックの深い人間観察に溢れ、青春の哀切や苦悩、生き急ぐ若者たちの切ない時間が、素晴らしい文章で綴られる。「路上」は、やがて、アメリカの若い世代から、圧倒的な支持を集める。
 映画にしない手はない。しかし、原作は劇的なドラマではない。散文詩のように綴られた小説は、第1部から第4部までと、短いエピローグの第5部からなり、いきいきとして破天荒、自由気ままなディーンと、控えめながら、ディーンに共感していくサルと、ディーンをめぐっての友人や女性たちとのさまざまな組み合わせでの旅と、旅の過程で出会った人たちとの触れあいである。

1950年代のベストセラーが今ようやく映画化
 世の慣習に挑戦するようにさすらい続ける若者たちを描いたロードムービーは、広大なる北米大陸を駆け巡る映像で、見る者の旅への欲求を刺激する。そして、こんな内容のベストセラーなら、どうして今まで映画化されなかったのか、と疑問がわいてくるかもしれない。
 しかし、ジャック・ケルアックの原作小説は、追いかけるべきストーリー性に乏しく、そのまま商業映画としてドラマ化するのには向いていなかった。そのため、『ゴッドファーザー(1972)』の監督として知られるフランシス・フォード・コッポラが1970年代にはすでに映画化権を獲得していたにもかかわらず、企画は何度も流れ、チェ・ゲバラの若き日を描くロードムービー『モーターサイクル・ダイアリーズ(2004)』で成功を収めたウォルター・サレス監督の手によって、今回、ようやく映画化が実現したのである。