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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.180/2013/01

「ビルマ(ミャンマー)の「ロヒンジャ問題」を手がかりにして(5)」


 ここで問題なのは、メディアの位置である。日本のメディアは“<2>ビルマ語を使わないビルマ以外の人びと(私たち)”だが、そこには細かく2つの立場がある。
 <2>—(A)日本政府の広報紙のようになって、政府の方針をそのまま伝える。
 <2>—(B)日本政府とは別の方針を持って、「ビルマ」から「ミャンマー」へと日本語表記を変える。

 <2>—(A)新聞各紙は、日本政府が日本語表記を〈ビルマ〉から〈ミャンマー〉へ変えたという理由だけで、現地の実状をあまり深く検討(研究)しないで変更した。
 <2>—(B)であるが、日本の新聞各紙は、現地の呼び方や発音を尊重する方針だとしている。
 だが、〈ビルマ〉と〈ミャンマー〉は、実は、同じ「ビルマ族」を表しているだけなのである。呼称に関して、過去に政治的な意味が加えられたという、ビルマにおける歴史的な背景を考慮に入れていない(前号で説明)。
 また1989年当時のビルマにおいて、口語では〈ビルマ〉が、文語では〈ミャンマー〉が一般的であったとしても、日本語の表記は従来〈ビルマ〉であって、そこに敢えて英語読みから変更する理由はない。
 また、ビルマにおいて最も重要な問題で、今のビルマが抱える各民族問題をすっ飛ばしている。現地読みと言えば聞こえはいいが、実は、その現地読みを採用するその基準や危険性を全く考慮に入れていない。汎ビルマ主義の台頭を危惧する少数派民族の危惧などを考えていない。つまりは現地への理解不足である。 

 〈ビルマ〉か〈ミャンマー〉に関して、さらに、以下の理由も付け加えられるであろう。

  • 東京外大や大阪大学(旧大阪外大)のウエブサイトを見ると、いまだに「ビルマ」「ビルマ語」と従来の日本語表記を使い続けている。
  • 日本のビルマ研究者の中には〈ミャンマー〉表記を使っている研究者も増えつつあるが、その研究者の集いの名称は今だに「ビルマ研究会」である。

  •  日本のメディアによる〈ビルマ〉から〈ミャンマー〉への呼称変更は、実のところ、それほど深く考えられたとはいえない。