パースエクスプレスVol.114 2007年7月号

「自らを救う合理性」

  本部前には、大勢の人びとが集まっていた。人びとは、4車線の道路を挟んで真っ二つに分かれている。一方は軍政のインテリジェンスと軍政に動員された人びと。他方はNLDとスーチー支持者である。
 驚いたことに、というか大いに戸惑ったことに、外国人の取材者は私一人であった。私の存在は、その場で完全に浮いていた。おいおい、外国の他の取材者は居ないのか。(たぶん)APやAFPなどの通信社やBBCやCNNの衛星放送、その他日本のメディアは現地のストリンガー(契約記者)に取材をまかせっきりにしているようだ。
 さらに私の存在は、数十人を超える軍の情報部員たちから不審な目で見られてしまった。そのうちカメラを手にした10人以上の男たちから私は、一斉にカメラを向けられてしまった。  基本的にジャーナリストは、事実を伝えようとすればするほど、現在の軍事政権の好ましくない事柄を報道せざるを得ない。政府にとっては取材者の存在は煙たい存在である。

 
軍政側(向こう側)と民主化活動家側の双方がお互い写真を撮りあう。

それ故、誰がどのような取材をしているのか、常にチェックする必要がある。さらに、地元のビルマ人ジャーナリストは、ビルマ人であるが故に、自ずと取材と発表に制限がある。だが、外国人取材者は、それがフリーランスであればあるほど、自由な取材をしてしまうので要注意とされるのである。
 しかしである。なんなんだ、これは。私を取り巻いたビルマ政府軍関係者の物々しさにはちょっと脅威を感じてしまった。ちなみに地元ジャーナリストはほとんど、NLD側に張り付いて取材をしている。
   

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