パースエクスプレスVol.114 2007年7月号

「自らを救う合理性」

 6月19日は、ビルマの民主化指導者アウンサン・スーチー氏の62歳の誕生日だった。スーチー氏は非暴力主義を貫く思想と行動で、1990年にノーベル平和賞を受賞している。国民に絶大な人気をもつスーチー氏は、軍事政権にとって目の上のたん瘤(こぶ)である。それゆえ、過去19年間のうち11年間、ずっと自宅軟禁状態に置かれたままである。ビルマ国軍の武力を背景に、自由を奪われた彼女の自宅軟禁の状況は、ビルマ国内の政治状況や国民の実情をまさに象徴している、とも言えようか。
 誕生日のその日、スーチー氏を慕う人びとや反軍事政権への意思表示する人が、彼女の誕生日を祝おうとしても、もちろん彼女の自宅へはアクセスができない。したがって、スーチー氏が書記長を務める国民民主連盟(NLD)の党本部に、人びとが集ることになる。
 NLDは1999年の総選挙で、485ある全議席のうち392席を、実に8割以上の議席を獲得した。

だが、軍事政権はその選挙の結果を無視したまま、権力を手放そうとしない。さらに今、前回の選挙結果を反故にして、確実に自らに有利な結果が出る、新しい総選挙の準備をしている。
   現在のビルマ軍事政権国家で、スーチー氏やNLDへの支持を表明することは非常に危険である。就職や進学の妨げにもなるし、仕事への妨害もある。さらに国家に反逆する政治犯として投獄されてしまう。
 ビルマ国内で、政府の方針に反対する立場を表明したり政治自体を語ることは、危険な行動である。タンシュエ上級議長をトップに頂く現在の軍政府は国民に対して、「国家」への忠誠を求めるのではなく、現政権に対しての忠誠のみを求めている。それにもかかわらず、自らへの不利益を覚悟で民主化活動を続けている人びとがいる。そんな人たちの存在を捉えるべく、スーチー氏の誕生日にNLD党の本部前に足を運んでみた。

   

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