実は、何の脈絡もなかったのだが、突然、(フィルム)カメラとデジタルカメラ(「デジカメ」)の違いがくっきりしてきたのだ。それは、「デジカメ」が登場以来、ずっと違和感を持っていたことだった。
「デジカメ」が一般化する前、フィルムカメラとデジタルカメラはどう違うのですか?そう聞かれることがよくあった。「『デジカメ』は便宜上、カメラの形をしているだけであって、あれはカメラではない」と言い続けていた。つまり、「『デジカメ』は、デジタル式の記録媒体である」と答えることが多かった。
そう表現しても、それが何を意味するのか、余り深くは突き詰めていなかった。つまり、デジタル式の記録媒体とは、どういうことかそれほど理解していなかった。それがこの時、故小川さんの語りから、それが何なのか、突然思いついたのだ。
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これまでのフィルム写真は、フィルムに影を焼き付ける(+化学薬品)という操作によって、写真を形にしてきた。そこには手で触ることのできるフィルムという実体があった。光の反応によって、フィルムに塗られた薬品に変化を与えただけである。そこには、自然界の感覚を伴っていたのである。フィルムカメラは、状態を変化させるという役割を担っていた。
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