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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.190/2013/11

「抗いの彷徨(1)」



初めて米国を訪れたのは1985年。その当時、米国を象徴する「自由の女神」は改修中でもあった”

初めて米国を訪れたのは1985年。その当時、米国を象徴する「自由の女神」は改修中でもあった。残念な思いもあったが、こういう姿の「自由の女神」を見る機会こそが珍しいと思った。靄った自由でもあった。

 前回は、米国のビートニクス作家ジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』の時代を振り返ってみた。その1970年代は、自分自身の青春時代の第一期(10歳代後半〜20歳代前半)でもあった。私はその後、第二の青春時代でもある1990年代の前半(20歳代後半〜30代前半)を、米国東部のボストンで過ごすことになる。写真を学ぶための渡米だった。
 私が繰り返し見る映画の一つに、そのボストンを舞台した、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(“GOOD WILL HUNTING”1977)』というのがある。
 義理の父親から暴力を受け、心を閉ざしたまま成長した青年主人公ウィル(マット・デイモン主演)の話である。心身ともに傷を抱えて育ったウィルは、学校には行かずMIT(マサチューセッツ工科大学)の清掃夫として働く。だが、天才的な数学の能力を持つ彼は、世界で最も優秀な学生が集まる大学町ボストンで、ハーバード大学を凌ぐとされるMITの教授をも圧倒する能力を見せつける。
 フォトジャーナリストと数学には、直に関係はない。だが、仏教国ビルマ(ミャンマー)取材をする中で、実は仏教と数学は法則性という点で共通項があるということを知った。あるとき、仏教と数学についての本を読んでいたら、「超限数」という記述に出くわした。なんだこれ(?)、っていう話である(「超限数」というのは、数学者には初歩なのかもしれないが)。
 例えば自然数は、1、2、3、4……と、その数は無限に続く。また、分数の1/2、1/3、1/4……というのも無限に続いていく。では、この「自然数の無限」と「分数の無限」はどちらが大きい(?)っていうナゾナゾのような設定である。無限と無限を比べようというのだ。そんなことが可能なのか。実は、可能なのだそうだ。
 答えは、自然の無限と分数の無限は同じ数(同じ大きさ)あるという。説明を聞いて、いったんは納得した。何やら、「宇宙の果てには何がある(?)」という疑問に答えが出たような話である。それを私は他の人には説明できないが…。
 宇宙の果てに何があるの?、という疑問は、直感的なものである。その直感に気づく人と気づかない人がいる。その両者の違いは何だろうか。さらに、その気づきをそのまま流せる人と流せなくてこだわる人がいる。それまた、その違いはなんだろうか。新たな疑問が湧き起こる。まるで禅問答の始まりである。