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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.176/2012/9

「ビルマ(ミャンマー)の『ロヒンジャ問題』を手がかりにして(1)」


ビルマ(ミャンマー)国境が近いチッタゴン丘陵に暮らす仏教徒たち

イスラームが主流のバングラデシュで、仏教徒はマイノリティ。ビルマ(ミャンマー)国境が近いチッタゴン丘陵に暮らす仏教徒たち(2009年12月)。


 一体、ラカイン州でのこの事件はどうして起こったのか。その背景を知るためにバングラデシュの首都ダッカに飛び、さらに飛行機を乗り継ぎ、ビルマ国境が近いコックスバザールの町を目指した。
 この20年というもの、主にビルマ国内で、或いはタイとの国境を中心に取材を続けながらビルマ問題を考えてきた。だが、ここでバングラデシュという、以前とは違った側面からビルマを見ることで、これまで深く考えることのなかった複雑に絡み合うビルマ問題に突き当たることになってしまった。
 現地に入った私がまず考えざるを得なかったのは、ビルマにおいて「民族」を考えるとは、すなわち宗教問題や植民地問題などを含めた歴史問題、さらに「お前は何者か」と問うような疑問そのものへの問いかけであった(つまり、どうしてそのような疑問が生まれるのか、という問いかけでもある)。
 もちろん、私はジャーナリストであって歴史研究家ではない。それゆえ、ビルマ語やベンガル語の原典資料を参照しつつ論を広げていくことはできない。
 だが、「どうして?」という、一度、頭によぎった疑問は、できるだけその答え(と疑問が生まれる背景)を探し続けたい、と思っている。そこで、ビルマの人でさえあまり触れたがらない「ロヒンジャ問題」を考えることによって、自分自身の疑問の解決の手がかりとしてみたい。

(続く)

バングラデシュとビルマ(ミャンマー)国境周辺図。

バングラデシュとビルマ(ミャンマー)国境周辺図。