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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.164/2011/9

「独裁国家の変化─鵺のような捉えどころのなさ」



   8月の半ばになると、ビルマの新政権は具体的な変化を打ち出してきた。テインセイン新大統領が突然、スーチー氏と単独で会談をしたのだ。スーチー氏側はこれまでずっと、ビルマという国のため、人びとのため、お互いの誤解を解くために対話をしましょう、と呼び掛けていた。でも、ほんの半年前までのタンシュエ上級大将は、ずっとその要求を無視してきた。
 軍は国を治めている立場だ。民主化勢力と同じレベルで対話などできるか、っという態度であったのに。例えば、軍政側はこれまで毎日、国営紙をまるまる1ページ使って外国メディア(BBC、VOA、RFA)を非難 ── これらの放送局は嘘を垂れ流し、ビルマ国民を分裂させようとしている破壊分子だ ── していたのだが、それが完全に消えた。 さらに、ビルマ国内ではインターネットの使用に規制があったのだが、それは緩められ、これまで閲覧することのできなかった、例えば「ヤフー」のサイトにアクセスできるようになった。そればかりか、『イラワジ誌(タイに拠点を置く反ビルマ軍政メディア雑誌で、ビルマ情報に関して最も精通している)』のウエブ版も閲覧できるようになった。しかも、昨年暮れからの中東で起こった「アラブの春」以降、いったんは強められたインターネット規制がある程度解除されたのだ。
 極めつけは、スーチー氏の写真が町中に溢れるようになったことだ。
 ビルマ国内の週刊誌類は100以上出版されているが、その多くはスポーツや芸能、人びとの暮らしや国内ニュース、ファッションやコンピュータ関係がほとんどで、スーチー氏の写真を載せるのは極めて危険なことであった。それが、8月に入って突然、路上で売られる新聞や雑誌にスーチー氏の写真が掲載されるようになったのだ。 驚くべき変化である。
 これから実際、ビルマは変わって行くのか。軍政から民政へと変わったのか?それは、本当の変化なのか。
 
 規制が緩められたと思えるメディアの変化を見てみよう。
 テインセイン大統領とスーチー氏が一緒にならんだ写真撮影が国営紙をはじめ、一般の雑誌にも大きく掲載された。何かが不自然だった。
 この両者の会談の裏話を地元の記者から聞くことができた。

 8月17日の朝、私はスーチー氏の家の前で張っていたんだ。NLD(スーチー氏が書記長を務める国民民主連盟)の広報官によるとその日、大統領との会談は「ない」という話になり、一時、スーチー氏の居所が分からなくなった。その後、判明したのだが、スーチー氏はその日、いつもの白い車ではなく、政府の用意した窓にスモークがかかった車で首都ネピドーに向かった。スーチー氏側はどうやら、大統領と会談を記者にあまり報道されたくなかったようだ。