シュエダゴン・パゴダが建つ境内を一見すると、表面をピカピカに磨かれた石畳は、冷たくさえ見える。試しに、そっと石畳に足を置いてみた。火傷をしそうなくらい熱せられている。すこし歩いてみた。熱さのため10歩も足を進められない。小走りでも20メートルもダメだ。
写真撮影にならない。帰ろう。汗をかきつつ、境内に通じる屋根付きの通路を通り、階段を下りて行く。すると、大勢のビルマ人参拝客が、ぐったりして寝転んでいる光景が見えてきた。ふと、目をやると、1人の男の子が、寝転んでいるお母さん(らしき人)の前で両手をかざしている。一体何をしているのだ?
気になって、しばらく観察していた。どうやら男の子は、お母さんがあまりにもぐっすり寝入っているため、心配になってしまったようだ。
“息をしてるの?”
声も出さずに、ジェスチャーだけで不安を表している。
「ねぇねぇ」と、お母さんの体を揺すって確かめればいいものだが、そんなことはしない。それがその男の子の優しさなんだろう。親を思う子の仕草だろうか。いいモノを見せてもらった。その光景を見ることができただけで、苦労してビルマに取材に入った甲斐があったものだ。
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