Vol.144/2010/1
「閉ざされた国 ビルマ(後)」

 エルサルバドルの取材を終えてビルマに関わりはじめた時、「ビルマ軍事政権下で生きる人びとを撮る」というプロジェクトは数年で終わると思っていた。
 この間、次の訪問予定だったアフリカの軍政ナイジェリアは体制が変わってしまった。もちろん、それぞれの国は、軍事政権が終わったからといって問題がなくなったわけではない。
 やがて、ビルマに関わりはじめて思いがけないほどの年月が過ぎ去った。知らぬ間に自分の頭にも白いものが目立つようになってきた。
 そして今、日本に帰るたびに、日本の社会が徐々に「少数者」を排除する社会に、ビルマのように自由にモノを言えない雰囲気になっているような気がしてならない。ビルマを追いながら、日本の行く末も気になる。
 フリーランスの、しかも写真を中心としたフォトジャーナリストの仕事は厳しい時代の局面を迎えている。だが、ジャーナリストとしての仕事や写真家としての仕事は、社会や人に関わる限りその役目は消えることはないと信じている。
 時に意気消沈することがあるが、その時は、ビルマで出会った人びとを思い起こし、前を向いて行こうと思う。

 
『閉ざされた国ビルマ』
(高文研、1,700円)

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