オーストラリアや日本には、亡命したビルマ人が大勢いる。いったんビルマを後にしたビルマ人は、外から見る自分の国のことを知って、驚き、懐かしみ、悲しむ。やがて亡命先で新たな生活を始めたビルマ人は、その地域に溶け込みながら生活基盤を築く。結婚し、家庭を持つ人も増えてくる。子どもも生まれる。だが、海外で生活し始めたビルマ人たちは、周りの人に、あるいは自分の子どもたちに、自分の出生であるビルマという国を説明することが難しいことに気づく。
私は、そういうビルマ人向けに写真集を作った。写真集には、普通のビルマ人の生活がありのままに写っている。私は在日のビルマ人たちに説明した。この写真集を利用して、是非ビルマのことを説明してください、と。
一方、今回出版予定の単行本は、日本の人向けに書いた。日本では、アウン・サン・スー・チーというノーベル平和賞を受賞した有名なビルマ人(いまだに自宅軟禁されている)のことは知られている。だが、それ以外に、ビルマにはどういう問題があるのか、あまり知られていない。そこで、この一冊に目を通すだけで、民主化問題、民族問題、人びとの暮らしなど、ビルマを概観できるように書き上げた。
出版は2010年1月初めの予定である。もし、正月休みに日本に一時帰国される場合には、是非、読んでいただきたいと思う。
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これだけだとわかりにくいと思う。そこで、以下、本書の「おわり」の部分から一部抜粋してみた。
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私自身も最近、ビルマ入国のビザを取得することが難しくなってきた。もちろん、ヤンゴン(旧首都・ビルマ最大の都市)市内ではデジタルカメラが普及し、わざわざ外国人が入って写真を撮る時代ではない。だが、自分が今、フォトジャーナリストとしてできることは何か。
それは、外国人でしかできない関わり方でビルマの現場を歩き、撮り続けていくことであると思っている。
一瞬を写す一枚の写真は、小さな力かも知れない。だが、写真複製が簡単なデジタル時代にあって、ビルマのある地域の何年何月何日に撮影したという時代の刻印を含んだ写真は、そこに写し込まれた画像の意味を容易に複製をすることはできない。そして、それらの写真の中にビルマの人びとの暮らしのかけがえのなさを少しでも含んでいたなら、写真を見る人の心を動かすであろう。私はそう信じたい。
それこそが、わたしがビルマで写真を撮り続ける理由である。
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