日本とオーストラリアのサッカーの違いはどんなところですか?
森安選手:試合に対するメンタルは、かなり違うと思います。オーストラリア人の方が試合に勝ちたいという気持ちが強いかもしれませんね。球際の強さも日本と違うのは、そのメンタルからくるのかもしれません。日本だとボールを奪ってから、パスを回すことが多いですが、こちらではボールを持ったら、数的に不利でもすぐに仕掛けます。ゴールに向かう姿勢という点ではポジティブですね。
豪州国内最高峰のリーグでプレーできているのは、何が他の選手と違ったのですか?
森安選手:試合中はボールを受けて、さばいて、ボールを動かして、散らすといった役割が多いので、自分の持ち味はパスの精度だと思います。日本では全然動きまわる選手ではなかったんですが、こっちに来て、周りからはそう思われているようです。日本人は真面目って思われがちですしね(笑)。練習の後もクールダウンして、ストレッチして、ごく当たり前のことをやってるんですけど、それがこっちの人からしてみれば、良いことをしてるという評価になってしまうようです。
昨年の8月21日、ラウンド3のブリスベン・ローアー戦でAリーグデビューを果たしましたね。その時のお気持ちは?
森安選手:途中出場でしたし、試合も負けていたので、試合の流れを変えられればいいなという気持ちでした。
3月に“これがラストかもしれない”という気持ちでシドニー入りして、8月にはもうすでに『シドニーFC』のメンバーに名を連ねていた。何か思うことはございましたか?
森安選手:その時は、特に何も思っていませんでした。自分でも試合に出れる、と思って練習に取り組んでいましたので。自分は外人枠の選手なので、逆に試合に出れないと何をしに来ているんだ、となってしまいます。
9月4日、ラウンド5のアデレード・ユナイテッド戦。後半から出場し、負傷して鼻血を出していますね。相手選手の肘が鼻にあたったんですか?
森安選手:日本だとイエロー、もしくはレッドカードが出ていたと思いますが、こちらだとプレーオン。審判の基準も日本とは全然違います。フィジカルは、確かに強いといった印象です。根本的に彼らは体が大きいので。しかも、その強いフィジカルで、日本では絶対にしないようなタックルも普通にしてきます。オーストラリアでプレーするのに、それが最初にてこずったことです。
8月に開幕してから10月24日のパース戦まで勝利がなかった。その試合の前に自身のブログで、監督を気遣うコメントを残されていますね?
森安選手:監督とは、こちらで初めて会いました。人間としても素晴らしく、日本ではなかなか出会えないタイプの監督です。日本だと選手は監督に畏縮してしまいがちですが、もちろん文化の違いもありますが、こちらでは会話や対応もとてもフレンドリーにできます。もちろんそこには、リスペクトもあります。
10月頃からレギュラーメンバーに定着してきましたね。
森安選手:ラウンド8ぐらいからですかね。僕も正直こんなに早くいくとは思いませんでした。自分にとって、そもそもシドニーFCへの入団までがとんとん拍子でした。去年、日本のJFLでプレーしてて、3月にこちらに来て、7月にシドニーFCへの練習参加、8月に契約。プロになって、シーズンの1/4が終わった時点でスターティング・メンバーに定着でき、そして今年の3月からは『アジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)』に出場して…。
そう考えると、2010年は劇的でしたね。そして昨年の10月、2年の契約延長を見事果たされた。お気持ちは?
森安選手:そうですね、やめようと思っていたところからなので。契約延長もありがたい話です。2013年までプレーができる。実は、更新時期がいつなのかも知らなかったんです。10月の半ば、お昼休みに突然チームのお偉いさんから声がかかり、「2日後ぐらいにチームの代表者たちと来年、再来年について話し合う会議があるから」と言われたんですが、実際よく分からなかったんです。そして数日後、オフィスに行き、渡された契約書を見てみると、複数年での契約更新でした。驚きました。
今年の1月3日、ラウンド23のニューキャッスル・ジェッツ戦で初ゴールを記録しましたね。
森安選手:シドニーFCでプレーする前のニューサウスウェールズ(NSW)州の1部リーグでは、結構、点は取れていたので待望のゴールでした。
ゴールを決めた後、指輪にキッスするようなパフォーマンスがありましたが…?
森安選手:日本に大事な人を待たせています。
3月からACLが始まりますね。昨年の3月、シドニーのスポーツバーで川崎フロンターレ対メルボルン・ビクトリーの試合をテレビ観戦されていますよね。今度はご自身がピッチの上に立つ番ですね。シドニーFCと同じリーグに鹿島アントラーズがいます。今のお気持ちは?
森安選手:シドニーに来たのが去年3月7日。その試合を観たのは、その1、2週間後くらいでした。そして、その1年後には、テレビの中で自分がプレーする。立場が逆転する。当時は想像できなかったことが、現実になっているので興奮しています。なかなかACLに出られるチャンスはありません。既に実力のある選手ではなく、自分は無名のところから這い上がって来ましたから。
今のご自身があるのは貪欲だったということですか?
森安選手:貪欲ということも大事ですが、自分にとって2010年はタイミングや運、全てが良い年だったと思います。
海外でプレーを目指す日本人サッカー選手へアドバイスを頂けますか?
森安選手:まず、言語は大事だと思います。自分は、海外で生活していましたので問題なく、そのお陰でスタート時点に立てましたが、コミュニケーションを図れないと、スタート地点に立てないこともあります。
実際、生まれはアメリカではないんですよね?
森安選手:はい、一部違った紹介のされ方をしていますが、日本の香川県生まれです。
当然、言葉だけでは成功はつかめませんよね?
森安選手:それから、メンタルですね。僕も日本にいる時より随分強くなりました。オーストラリア人もそうですが、外国人選手は我が強い人が多いので、その中でやっていくためには、自分を持っていないといけない。強くいることをキープすることが大事ですね。
最後にご自身の今後の目標をお聞かせください。
森安選手:3月から始まるACLで活躍したいです。活躍できれば違う道もできてくると思います。近い将来、日本でプレーできればとも考えています。もちろん、ヨーロッパでもやってみたいという気持ちもあります。サッカー選手なので。でも、最終的にはまだ経験したことがない日本のJリーグでプレーしたいです。
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