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パースエクスプレスVol.146 2010年3月号

≫ パースにて日豪外相会談が開かれる
≫ エスプラネードに日本人彫刻家の作品設置


 政治
  パースにて日豪外相会談が開かれる
2月20日と21日、岡田外相はオーストラリアを訪れ、ラッド首相やスミス外相と安全保障、核軍縮、捕鯨問題などについて会談を行なった。

 2月20日、岡田克也日本外務大臣は、シドニーにてケビン・ラッドオーストラリア連邦政府首相と会談した。その際に岡田外相は、米環境保護団体シー・シェパードによる南氷洋調査捕鯨への妨害行為に関して「暴力的な行為は絶対に許されない。シー・シェパードはオーストラリアを寄港地の1つにしており、寄港することがあれば断固たる対応をしてもらいたい」と要望した。これに対してラッド首相は、「暴力的な行為は受け入れられないが、法的根拠がなく困難だ」と述べた。この会談の前日、ラッド首相は日本の調査捕鯨の停止を国際司法裁判所に提訴する構えを見せていた。民放テレビ局セブン・ネットワークのインタビューで「来季の調査捕鯨が始まる前の2010年11月までに提訴を行なう」といった期限についても明言した。ラッド労働党は、2007年11月に行なわれた連邦総選挙戦にて日本の南氷洋調査捕鯨に対し、国際司法裁判所に提訴してでも停止させると公約している。

 翌21日、岡田外相は、西オーストラリア州パースにてスティーブン・スミス オーストラリア外務大臣と会談した。会談後に行なわれた共同記者会見では、日本そして地元のメディアが大勢詰め掛け、両国代表質問では共に捕鯨問題について言及された。日本側から挙がった「シー・シェパードの違法な行為に対してオーストラリア側は何ができるのか」といった質問に、スミス外相は「攻撃的で違法な行為は容認できない。しかし、捕鯨問題については2国間での立場は異なり、オーストラリア政府としては南氷洋調査捕鯨に対して国際捕鯨委員会(IWC)で解決をみることができなければ、国際司法裁判所に持ち込み、南氷洋での調査捕鯨停止を求める」と明言した。また、オーストラリア側の「期限内の解決がみられない場合は、両国間の関係にダメージを与えるのでは」との質問に、岡田外相は「提訴への言及は非常に残念。IWCまたは2国間でしっかり協議すべきだ」と反論した。

当会談で捕鯨問題以外では、核軍縮、不拡散について『核兵器のない世界』を目指す共同声明が発表され、また自衛隊と豪軍の間で燃料を融通できる物品役務相互提供協定(ACSA)締結に向けた協議開始を合意するなど、核関連や安保問題では両国の足並みは揃った。


岡田克也日本外務大臣(写真右)とスティーブン・スミス オーストラリア外務大臣(写真左)の共同記者会見の模様。捕鯨問題について両国間の溝は浮き彫りとなった。


両国メディアにとって大きな注目がよせられた捕鯨問題。


両外相の握手により会見は終了した。

 
 社会
  エスプラネードに日本人彫刻家の作品設置
昨年パース市アート基金は、日本を代表する彫刻家・牛尾啓三氏の作品『oushi zoukei メビウスの輪』を購入した。3月5日、その作品の除幕式がエスプラネード駅前で行なわれた。牛尾氏、パース市長リサ・スカフィディー氏、在パース日本国総領事・佐藤虎男氏にお話を伺った。

「毎朝4万人もの人が利用するエスプラネード駅前に作品が設置されたことは、足元が震えるほど嬉しい」と語る牛尾氏。作品に込めた思いについて、「いつも子ども達が夢を持てるような作品を作りたいと思っています。今の社会を反映したものより、永遠的に愛されつづけるものがいいですね」その思いがモチーフである、エンドレスに続くメビウスの輪には込められている。また、「幼児が触りたくなるような作品であってほしいと願っていますので、子ども達がこの作品の穴をくぐったりして遊んだりしてくれたら、なにより嬉しい」と話す。手で半年かけて創ったというぬくもりに溢れるこの作品は、パースで愛され続けることだろう。
 そんな牛尾氏にパースの印象について伺うと、「パースへはこれまで何度も足を運んでいます。初めて訪れた際、向こう100年リミットが来ない場所だと感じました。今後10〜15年で人口が倍になるとも聞きますし、今の日本にはない勢いがありますね。ここで暮らす日本人の方は皆さん、パースの方と友好な関係を上手に築いていらっしゃる。ぜひ私も仲間に入れてもらいたいですね」と語った。
  スカフィディー市長によると、毎年コテスロー・ビーチで開催されている『sculpture by the sea』で昨年、同作品の“シンプルかつとても力強い”点に惹かれたとのこと。「あくまで作品が決め手」と市長は語り、西豪州と牛尾氏の活動拠点である兵庫県が姉妹都市関係にあることについては「全くのうれしい偶然です」と述べた。作品の印象的な真ん中の穴からのぞくと、パースのシンボルであるベルタワーや観覧車を見ることができる。作品とパース、それぞれの魅力を伝えるのに適した場所として、今回の場所が選ばれたそうだ。
  また、佐藤総領事は、「これまでの日豪間の交流は経済的な関係が主で、文化交流については比較的影が薄かったように思う。今回の作品が、日豪間の文化交流を更に深める1つのきっかけになることを期待したい」と語った。

取材協力:City of Perth、在パース日本国総領事館


牛尾啓三氏と作品『oushi zoukei メビウスの輪』


除幕式で挨拶をするスカフィディー・パース市長