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現役新聞記者が、過疎化・少子高齢化が進む日本を追う

ムラの行方 藤井 満

Vol.181/2013/02

第10回「たたらの里の暮らし考(10)」


農業用水から導かれた水が、ここから一気に発電所に落ちる 小屋に収容された発電機

農業用水から導かれた水が、ここから一気に発電所に落ちる。

小屋に収容された発電機。


 中国地方には1950年前後には出力1,000キロワット以下の小規模水力発電が約600カ所(島根県内に約100カ所)あり、中国小水力発電協会の加入施設だけでも55年ごろは約90カ所を数えていた。それが、機器の更新や水路の補修がままならないため、協会加入施設は52施設(島根県内は10施設)に減った。
 2011年現在は、中国電力管内で約2万世帯分の電力を供給しているが、「電力の買い取り価格が上昇しなければ10年以内に半減する」と同協会は見ている。
 森山さんは昨春、約400万円かけて自宅に太陽光発電装置を導入した。国の政策で、1キロワット時48円の買い取り価格が10年間保証されているため、十数年で元が取れる計算という。
 福島第一原発の事故もあって、「水力は自然にやさしいエネルギーだけん、(発電所を)大事に使っていこう」と地域の集まりで森山さんは呼びかけている。「食料もエネルギーも地域で自給すれば災害時にも強い。危険な原子力や二酸化炭素を出す火力発電と違い、ミニ水力は自然エネルギーです。買い取り価格を上げるか、補助制度を設けて持続できるようにしてほしい」と話す。
 原子力発電所建設などの大規模開発は、建設業者が群がり、行政は原発関連の税金や交付金に頼り、年月を経て税金や土木事業が減ると「2号機」増設を求める…というパターンに陥りがちだ。麻薬中毒患者のように、延々と巨大事業に依存し続けることになる。
 その点「ミニ水力」のような小規模開発は、一定の買い取り価格さえ保証されれば、自然環境にダメージをあたえず、地域住民を「依存症」に陥らせることなく、地域作りの核として活用することができる。
 「地域のまとまりがあるから発電所が継続できた面もあるし、発電所がもたらす共同作業やわずかな収入が、地域のまとまりをつくっている面もある」と森山さん。
 等身大の持続可能なエネルギーは、地域の自立を育む役割も果たしうるのだ。

(続く)