僕はもう一度前庭を横切って玄関に行き、今度は思いきりドアをたたいてから家の中の反応を待ちました。すると朝早くからの物音に驚いたのか、隣のテラスハウスの女性がガウンを羽織りながら垣根越しに顔を覗かせました。
 「あなた一体、今何時だと思っているの?警察を呼びますよ。」
 僕は急いでガウンの女性に説明しました。
 「いや、あやしい者じゃないんです。この家の男性にちょっと急用があって、それで少し慌てているだけなのです。」
 「あら、お隣さんなら昨日越して行きましたよ。いい家が見つかったとかで、この家ももうすぐ競売にかけられるはずですよ。」
  「それでは、もうここには誰もいないんですか?」
 
「詳しいことはわからないけれども。」

 と言いながら親切なその女性は競売をする不動産屋の連絡先を教えてくれました。僕は彼女にお礼を言ってからテレフォンボックスに戻ると、
 「やっぱりもういなかったのか?」
 と聞いてくるチャーリーに力無くうなづいてから
 「これでテラスハウスの線も駄目になった」
 と一人つぶやきました。
 「慌てるなよMORIO。」
 チャーリーに腕を引っ張られるようにして僕達は、24時間営業のカフェに入りました。
 「MORIO、よく考えてみろよ。MADISONは1週間もおまえの部屋で缶詰になっていたんだろう?当然ジェザの野郎だってこれはただ事じゃないと思い始めたに違いないから、最悪の場合を考えて身の回りを整理し始めていたとしても不思議じゃ無いよなあ。」

   


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