第1話 「エル マクファ−スンのひも」

 始めまして。僕、MORIOといいます。
 オ−ストラリアに来て、2年になります。この度、パ−スエクスプレスの編集長から、君の体験は変わっているから何か書いてみてくれないかと言われて、タダじゃ嫌ですよと言ったところ、では何か考えてみましょう言ってくれたので、うまく書けるかわからないですが、知ってることだけ書いていこうと思います。
 くれぐれも、無理して読まないで下さい。

 僕はちょっとお店の名前は言えないのですが、ワ−キングホリデーでこっちに来て以来、2年近くもずっと風俗のお店で働いていました。ビザはというと…。もしビザの事で誰かにチクられると日本に還されてしまうかもしれないので、そのお店のある場所は絶対に言えないのです。とにかくパ−スじゃない、どこかのオ−ストラリアの街だと思って下さい。

 どこから話しましょうか。
 僕は、日本にいた頃は田舎の図書館で働いていました。そこは、発電所のある村で、人なんてほとんどいないのですが、図書館とか体育館とかスパセンタ−とかが、誰も歩いていない村のはずれにいきなり突っ立っていて、そのほとんど人の来ない建物の中をダスキンのモップを押しながら来る日も来る日も歩き回ることが、僕の仕事でした。
 なぜ、そこで働いていたのかと言うと、僕の父親が電力会社にいた関係で僕にもできそうな仕事ということで、考えてくれたみたいなのです。

 


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