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あなたの言いたいこと

Vol.210/2015/07

「絶対に埋まらない溝」

 パースエクスプレスは、私がオーストラリアに来た年に、初刊を出されたのを覚えています。ロングラン、おめでとうございます。その後、パースには一年しか居ませんでしたが、先日、十年ぶりに観光でパースを訪れ、御誌を手に取り、懐かしさが込み上げてきました。

 現在、シドニーで飲食店を経営しております。経営者と従業員について戯言を書かせて頂きます。

 もう十数年以上、この立場で仕事をしていますので、今始まったことではありませんが、またこんな陰口を人伝えで耳にしました。「オーナーは高い給料を取っているのに、俺たちにはこれだけ」「いい車に乗って、豪邸に住んでいるのに、俺たちにはこれだけ」「外食ばかりして、でも俺たちは外食なんかできない。給料がこれだけだから」「日本にもちょくちょく帰っているけど、俺たちは帰れない。こんな給料じゃ」といった類です。
 簡単に言ってしまえば、このような不満があるのなら、その従業員とはもう一緒に仕事はできませんので、お別れするしかありません。ただ、これだけは覚えていて欲しいです。お給料を「出す側」と「もらう側」には、非常に大きな違いがあって、その溝は絶対に埋まることはないということをです。

 「出す側」は、どんなに大きな会社でも、どんなに小さな会社でも、お金を工面しなければなりません。いくら調子が良くてもです。ただ、調子が悪い時の工面ほど“身を削られる”ことはありません。当然、それを覚悟しているのが経営者ですが、その“身を削る”ことがどんなことなのか、分からないのが「もらう側」なのです。
 例えば、“身を削る”ことで「出す側」は眠れないことなんてしばしばです。長期勤務で3、4時間しか眠れなくても、すっきりできるのが「もらう側」です。いくら寝る時間があっても、工面のことを考えると眠れない、それが「出す側」で、たとえ寝られたとしても、すっきりはしません。

 「出す側」は、工面のために少しでも無駄を出さないよう、見えない努力をしているのです。「もらう側」には、特に見せないようにしています。もしかしたら、工面の理由も告げずに、何も見せない経営者もいるでしょう。それは、「もらう側」への配慮です。高い給料、いい車、豪邸、外食に、帰国にも、理由があるのです。ただ、その理由を説明しても、「もらう側」は理解できないでしょう。説明しようとする経営者も少ないかも知れません。それこそ、溝ですし、意味を成さないからです。

 経営というものは、お金を“作り出す”ことです。「もらう側」にそれができるならば、「出す側」に転身すべきでしょう。実際、そのためには、“作り出す”前に、お金が必要になります。私のように飲食店でしたら、お店を作らなければなりませんし、提供する料理を作るため、食材も購入しなければなりません。申しておきますが、それは、人から借りたお金だととしても、自分のお金となりますが、借りたお金はもっとやっかいな責任が負荷されます。動かしてみないと、その違いはわからないかもしれませんが。

 つまらぬ話をしました。文句が言えて、眠れることが羨ましく思う時もあります。ないものねだりなんでしょうけど、胃の痛みを感じながら眠れぬ夜を過ごしていると、そう感じてしまいます。「埋まらない溝」なので、書いてもしょうがないことなのですが、私もパースエクスプレスの一読者として、何かを残せたらと思った次第でした。 パースエクスプレスの益々のご活躍、お祈りしております。

<投稿者> 匿名希望 48歳 男性