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あなたの言いたいこと
Vol.176/2012/09

今回は、世代の違う2人の男性からの投稿を紹介します。

「できると損?」


 オーストラリアに来て10年以上になります。オーストラリア人の妻と、子どもは2人います。職場は、オーストラリア人ばかりの環境です。

 朝起きると、妻から「今日はシリアルじゃなくて、目玉焼きが食べたい」と言われ、自分が台所に立ちます。役割として、シリアルは妻が用意し、目玉焼きなどの火を通す料理は自分が作ります。下の子どもから「ダディのお弁当がいい」とリクエストを受ける時も、私が作ります。妻はサンドイッチを作りますが、私の場合は料理したおかずを詰めてお弁当を作ります。妻は「料理はあなたの方が得意だから」と言って、台所仕事は私がほとんどやります。

 会社に行き、自分の机の周りが整頓されていないと1日のスタートが気持ち悪いので、まずは簡単に掃除をします。すると、隣の同僚が「簡単でいいから、俺のところもお願いできる?」と言ってきます。次いでなのでやってあげますが、コーヒーを入れるにも、「俺のも」と言ってきます。これも次いでなので、入れてあげます。同僚は、「きれい好きだし、コーヒーを入れるのも上手いね」と言ってくれます。 次の仕事のため書類整理をすることがよくありますが、経理のおばさんに「これも次いでにお願い」と整理を頼まれます。整理は自分のためにしておきたからやっていますが、おばさんの書類整理も、断る理由が見つからないのでやってあげます。
 パソコンにも多少の知識があるので、自分のコンピュータを使いやすいようにカスタマイズしていますが、社長が「俺のも頼む」と言ってきて、断れずに引き受けています。社長は「コンピュータのことは○□に聞けば、即決だね」と誉めてくれます。

 仕事が終わり家に帰ると、妻が「子どもとシャワーを浴びて、寝かしつけをお願い」と言ってきます。自分も子どもと一緒に過ごしたいので喜んでやりますが、疲れている時は思ったように体が動かないこともあります。妻は「子どもがそう望んでいるし、あなたの方が上手だから」と言ってきます。

 週末は、BBQがほとんどです。“BBQは男の仕事”となっている我が家では、私が準備して、焼いて、後片付けをします。妻は、「あなたのBBQは本当に美味しいわ」と言ってくれます。ただ単に日本食品店で焼肉のタレのようなものを買ってきて、簡単に味付けをしているだけですが、妻の喜ぶ顔を見ているのも嬉しいです。

 さて、自分の許容以上のことをチャレンジしたり、それによって人が喜んでくれたり、誉めてくれたりすることは気持ちの良いことです。ただ最近、自分は“おだてられているだけ?”なのかと思うこともあります。
 職場では、自分の業務をこなすだけでも精一杯なのに、いろいろとお願いごとを受けて、自分はいつもオフィスで最後の一人になっています。「できることをできない」と断るのも嫌なので、引き受けてしまいますが、「これでいいのか?」と考えてしまうこともあります。 家でも役割分担で、できる人がやればいい、と理解しています。でも、できないことをできるようになるため、助け合うことも大切だと思っています。「できる人がやればいい」となれば、できない人はいつまでたってもできないままとなってしまいます。

 ふと思うのですが、このままでいくと、家でも職場でも、“できる人が損をする”ような世界になってしまわないかと…。でも、大人の世界ですから、そこはなるようになるのかなぁと思っていますが、子ども2人には、そうならないようにしたいと思っています。「できないことはできない」ではなく、「できなこともできるようになろう」といった教育をしていきたいと思っています。こんなことを言ってはいけないのでしょうけど、オーストラリア人の妻にはこの感覚は、もしかしたら理解してもらえないかもしれません。これは、個人の問題ではなく、文化の問題かもしれませんね。

<投稿者>匿名希望 42歳 男性