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Ijapan Vol.01
Ijapan Vol.02
Ijapan Vol.03
About Perth〜オーストラリア・パースを知る〜
Link to Perth 〜パースのお役立ちスポット〜
▼ Back Number
最終回「不屈」
第7回「プロフェッショナル」
第6回「決断」
第5回「プレースタイル」
第4回「言葉」
第3回「見えない壁」
第2回「挑戦」
第1回「契約書」
Vol.174/2012/7
第3回「見えない壁」
皮肉にも山田が抜けたトップチームは、リーグ11戦目(6月9日)からも着実に勝利を重ね、負けなしの4勝1分けの成績を挙げている。リーグ15戦を終了して、得失点差では劣るも、勝ち点では同点のリーグ1位をひた走る。一方、リザーブチームは1勝4敗の成績で、5試合で16失点。1試合あたり3.2失点を記している。決して誉められる数字ではない。そのリザーブチームで、山田は右サイドのディフェンダーで試合に出場する。ディフェンダーとして、失点には何らかの責任を感じている。2−4で負けた6月30日の14戦目の試合後、リザーブチームのMichael Garcia監督に山田のプレーについて聞いてみた。返ってきたコメントは「コウジは良くやっている。いいプレーをしている」だった。
週3日の練習は、トップチームとリザーブチームに分けて行なわれる。山田は、トップチームでいつも練習をする。週末の試合は、普段のチームメイトとの試合ではなく、借りもののようにリザーブチームに加わる。よって、日頃からのコミュニケーションが不十分なため、試合でのコンビネーションが即席となってしまう。そんな中でも、山田は卒なくプレーをこなす。監督の「いいプレーをしている」といった言葉は、誰もが認める評価だ。
そもそも、山田は国内1部リーグのAリーグでのプレーを目指し、パースへ来た。そのためには、今のリーグ(2部)ではトップチームでプレーすることは最低条件となる。リザーブチームは、山田の主戦場ではないのだ。
国内1部のAリーグの2012−13シーズンは、10月5日の開幕戦で始まる。パースに本拠地を置く、パース・グローリーの初戦は10月7日となり、開幕に向けグローリーは7月中旬よりフレンドリーマッチにてクラブのプレシーズンを開幕させる。昨年同様、今年も南アフリカでプレシーズンの一環としてキャンプを張るグローリーだが、そのキャンプ後、9月5日に山田が所属するInglewood Unitedとの練習試合も計画されている。
これは、山田にとっても大きなチャンスとなる。グローリーの関係者の目に留まる機会になり得るからだ。そのためにも、山田はトップチームでプレーすることが大前提となる。現在のリザーブチームからトップチームに上がらなければ、その目にも留まらない。
山田は、パースでプレーしてきている他の選手との比較において、外国人選手としての査定がいつでも加わる。つまり、期待が上乗せされる。それに応えなければならない。「声が出ていない」、「消極的だった」、「けがの選手の代用」といった理由がもしあったとしても、実力が全てであるはずのスポーツの世界で、その理由をはね退ける実力があれば、誰も文句は言わない。しかし、もし山田と全く同等の技量をもった選手がいたとした場合、監督は間違いなく山田ではなく、パースで育ったその選手を起用するだろう。いや、山田より多少力が劣っていたとしても、その選手をピッチに送り込むだろう。 コーチ陣、そして選手同士も、自分たちと同じ環境で育った間柄ならば、10あるうち5も説明すれば意図することを理解できるだろう、といった予測が自然と生まれるはずだ。事実、理解できるのかも知れない。しかし、違う環境で育ち、使う言語が違う選手には、10のうち8は説明しなければならないのかもしれない。ならば、説明が少ない、楽な選手を選ぶのが妥当だろう。
フェアではないかもしれない。しかし、これは外国人選手が課せられる宿命のようなものだ。この宿命を今まさに山田は背負っている。見えない壁の宿命を山田は乗り越えなければならない。この壁も今、リザーブチームでプレーしている理由の一つなのだろうか。
そんな現状について山田に問うと、遠くを見つめた後、澄んだ目で「分かっていましたから…」と答えた。外国人選手としてルーマニアでプレーした経験がある山田にとって、全てが想定内のようだった。