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【パースエクスプレス・マガジン】<スペシャル・インタビュー 西オーストラリア・バレエ団>一回一回の公演を大切に踊る

若くしてプロになり活躍していたが、けがによって踊ることを一度は諦めようとした。しかし、手術とリハビリを繰り返してなんとかけがから復活し、11月21日からの西オーストラリア・バレエ団(West Australian Ballet/WAB)による公演「ALICE(in wonderland)」で、2年ぶりにプロの舞台に舞い戻った齋藤希生さん。「踊れたことが本当に嬉しかったです。プロとして戻ってこれたという喜びが大きいです」と語ってくれた齋藤さんにプロへの復活の道のりなどについて伺った。
 
写真提供・取材協力: 西オーストラリア・バレエ団(West Australia Ballet/WAB)
 
バレエを始めたきっかけ、その後のバレエとの関わりを教えて下さい。

母がバレエ教室の先生だったので、小さい頃から母が踊っていたのをずっと近くで見ていたのがきっかけです。実際に4歳からバレエを始めました。そこから北海道のコンクールで優勝し、中学生頃から全国区のコンクールに出場して、2013年には『ユース・アメリカ・グランプリ』でスカラシップをもらいました。そのスカラシップを頂いた時、高校受験を控え、ちょうど進路を決める時でもあったので、モナコ王立アカデミープリンセスグレースへそのスカラーシップで留学しました。
 
留学先でのお話を聞かせ下さい。

モナコの学校では朝8時15分から夜6時までレッスンをして、その後に日本の通信高校の勉強をしていました。自分は当初、3年間モナコの学校で学ぶ予定でしたが、校長先生より飛び級を提案して頂き、17歳の2年目でバレエ団のオーディションを受けながら就職活動をして、翌年の18歳の時にポーランド国立バレエ団からプロ契約を頂いて入団しました。
 
プロとして踊っていたポーランド国立バレエ団での時のお話を聞かせ下さい。

所属は2015年から2018年となりますが、在籍中に足首のけがをしてしまい、ポーランドと日本で何度か手術をしました。日本でもいろいろなお医者さんに診てもらいながらリハビリもして、足首の使い方を一から見直したりしながら治療をしました。実はその時、治りが良くなかったのでバレエを辞めようとまで思ってしまいましたが、“続けられるだけダンサーとして踊りたい、できる限りはやってみよう”と思い可能性を探り続けていました。そして、もう一つの理由として、プロのダンサーとして父に自分の踊っている姿をまだ観せたことがなかったので、その姿を観せるためにも辞めずに、その時は治療に専念しました。
 
今回はどういう経緯でWABと契約されたのですか?

けがから回復して踊れるまでになったので、今年2019年の2月くらいからオーディション活動を始め、そのためにいろいろな国のバレエ団に行きました。その中でWABには、8月下旬にオーディションを受け、9月中旬に合格の連絡をもらい契約となり、11月上旬にパースに来ました。
 
WABとパースの印象は?

前所属のポーランド国立バレエ団には80人ものダンサーがいましたが、ここWABはその約半分の人数ではありますが、みんなが同じ方向を向いているといった印象です。オーストラリアの国民性なのか、みんな優しく、明るく、各ダンサーのレベルも高いと思います。パースの街は落ち着いている印象です。ビーチの夕日はとってもきれいですね。自然に癒されました。
 
バレエにおけるご自身の特徴を教えて下さい。

身長が169㎝あるので、日本人ダンサーとしては高い方だと思います。外国人の中でも身長的には遜色はないくらいなので、体のラインやポジションを美しく見せられることが特徴かもしれません。
 
今後の目標を教えて下さい。

けがからの復帰で今一番大切に思っているのは、長く踊り続け、一回一回の公演を大切に踊るということです。もちろん、バレエ団の中の階級も上げていきたいと思いますが、今はそれ以上にまずどれだけ自分のコンディションを保ちながら、長く踊り続けられるかということを考えています。けがをしてから4~5年が経ちますが、今もまだ完治していないので、そのけがと上手に付き合っていくのも目標です。
 
最後に本誌読者、特に日本人の方に一言頂けますか?

日本では、劇場にバレエやオペラを観に行くとなるとみんなすごく構えてしまうと思います。ただ、オーストラリアの人はバレエを観に劇場に足を運ぶということが日常の中にあると思いました。なので、あんまり構えずに楽しいものを観に行く、新しいものを発見しに行くという感じで、気軽に劇場に足を運んで、バレエを観に来て頂けたらなと思います。
 

 

齋藤 希生(さいとう きき)4歳よりスタジオ・アップル札幌日の丸舞踊会にてバレエを始める。北海道バレエコンクール児童の部、ジュニアB部門で金賞他、その他コンクールで入賞多数。若手ダンサーの登竜門『2012年ユース・アメリカ・グランプリ(Youth America Grand Prix/YAGP)日本予選』でトップ12に入賞し、モナコ王立アカデミープリンセスグレースとチューリッヒダンスアカデミーより年間スカラシップを獲得。2013年も同『日本予選』で同じくトップ12に入賞、スカラシップを獲得して、モナコ王立アカデミープリンセスグレースへ留学。ルカ・マサラ氏に師事し、クラシックバレエとコンテンポラリーを学ぶ。2015年に同校を卒業後、ポーランド国立バレエ団に入団。

 

西オーストラリア・バレエ団(West Australian Ballet)西オーストラリア州・パースに拠点を置き、1952年に設立され、今年で67周年目を迎えた国内では最古のバレエ団。公演や国内外のツアー以外にも、ワークショップや育成プログラムの提供など地域活動も行う。芸術監督はベルギー人のAurelien Scannella。https://waballet.com.au/
西オーストラリア・バレエ団には、日本人プロダンサーとして野村千尋(のむらちひろ)さん、野黒美茉夢(のぐろみまゆめ)さん、武藤圭吾(むとうけいご)さん、アシスタント・バレエ・ミストレスとしてダンサーの指導補佐を行う佐藤玲香(さとうれいか)さんが在籍している。

 

2020年のWABの公演スケジュール
Light and Shadow: Ballet at the Quarry
開催期間:2月7日~29日 会場:Quarry Amphitheatre, City Beach
Genesis
開催期間:3月24日~28日 会場:West Australian Ballet Centre, Maylands
The Sleeping Beauty
開催期間:5月8日~23日 会場:His Majesty’s Theatre, Perth
STATE
開催期間:6月19日~27日 会場:State Theatre Centre of WA
Dracula
開催期間:9月11日~26日 会場:His Majesty’s Theatre, Perth
GALA
開催期間:11月19日~12月11日(確定公演日のみ)会場:His Majesty’s Theatre, Perth
The Nutcracker
開催期間:11月21日~12月13日(確定公演日のみ)会場:His Majesty’s Theatre, Perth
チケットの購入はticketmasterまたはWABのウェブサイトからお求め頂けます。https://waballet.com.au/







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