Q:
オーストラリアで起業を考えています。ビジネスを始めるにあたり、タックスリターン以外の順守事項を教えて下さい。
A:
もし、オーストラリアでビジネスを始めようとお考えでしたら、それは簡単で、明日にでも始めることができます。しかしながら、ビジネスを始めるにあたり、宣伝のためのフェイスブックや広告を考え、仕入れ先、開業場所や売値、パッケージデザインなどを考えたり、やることはたくさんあります。そして、ビジネスを始めるにあたって必ずついてくる順守事項(法律に従いやらなくてはならないこと)も考える必要があります。
まず、最初にビジネスを始める場合は、本誌9月号(File 03/v236)で軽く触れましたが、オーストラリアにある主に4つのビジネス形態の中から、どの形態でビジネスを始めるかを考える必要があります。これが決まらないと誰がビジネスを行うかが不明となるので、何も始めることができません。会社なら会社の登記、個人事業主ならABNの登録です。
次に、そのビジネスを行うのにどのような資格、ライセンスが必要なのかも考える必要があります。例えば、レストランならただ料理を出すのではなく、カウンシル(行政機関)にキッチンなどの造作をチェックしてもらい飲食業の許可を得る必要があります。
そして、中でも一番大きな順守事項が、税金です。ビジネスにおける収入は当然、課税所得(税金のかかる収入)についてもです。ビジネスの収入は、経費とともにタックスリターンで税務申告する必要があります。もし、会社を設立したなら個人のタックスリターンとは別の会社のタックスリターン、決算が必要となります。これに加え、予想売上高によってはGST(オーストラリアの消費税)の登録が義務付けられます(義務付けられなくとも任意で登録した方が得というケースもあります)。
また、人を雇う場合は、スタッフの給料から税金を天引きする必要があるため、これも登録が必要です。これらはBAS(Business Activity Statement)という税務申告で申告します。これらは、先月号(File 04/v237)で扱った収入と経費の記帳を元に申告することになります。ちなみに、最近日本人の間でも増えてきた、UBERはいくら稼ぐかに関わらず、GST登録が強制となります。
その他にも自分の名前や会社の名前と異なる名前でビジネスをする場合は、ビジネスネームの登録も必要となります。人を雇う場合は州のワークカバーの登録も義務となりますし、ビジネスに何かあった時のための保険も考慮する必要があるでしょう。自分がスタッフに払うことになる、スーパーアニュエーションの理解も必要です。
これらの事項を順守することは最初が肝心で、最初にきちんとセットアップし、理解すると後々楽になります。これをないがしろにして、訳が分からないままビジネスを進めていき後悔する、という方が後を絶ちません。これらを最初にバシッと理解するためにビジネス税務会計専門の会計士に相談することをお勧めいたします。
また、今後機会があれば寄稿致しますが、目先の請求書の金額だけがコストではありません。何かをし損ねたり、しなくてもよいものまですることになった、なども立派なコストとなります。ビジネスオーナーの本業は攻撃、つまり、ビジネスの富を増やしていくこと、それに伴い従業員を幸せにしていくことですので、守らなくてはならないこれらの税務には、できる限り手間やエネルギーを割かないことが大切となります。
賀谷祥平 Shohei Kaya
豪州公認会計士、豪州登録税理士、米国公認会計士。上智大学経済学部、James Cook University MBA、University of New England会計大学院、卒業。Ezy Tax Solutions Pty Ltd代表取締役。また、2001年、騎手を志し豪州の競馬学校に入学。2003年、ニューサウスウェールズ州Coffs Harbour競馬場にて騎手デビュー。現在は、クイーンズランド州北部の競馬場で騎乗。