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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda

Vol.197/2014/06


「抗いの彷徨(7)」



夕暮れ迫る中、家路に就く母と娘らしき親子(ニカラグア)

夕暮れ迫る中、家路に就く母と娘らしき親子(ニカラグア)。

 中米エルサルバドルでフリーランス・フォトジャーナリストの活動を始めた際、自分にとっての最大の関心事は、やはり「軍事政権下で生きる人びと」であった。やがてそれは、隣国グアテマラに関わることで「先住民族の抵抗運動」につながり、同じ中米のニカラグアを訪問した時には「貧富の差の拡大—世界を覆う貧困」にまで広がった。

 独裁者ソモサ一族が支配するニカラグアを大地震が襲ったのは1972年。ニカラグアはその後、世界から寄せられた義捐金や物資をソモサ一族が着服するに至り、人びとの不満は爆発し、1979年にサンダニスタ革命が起こることになる。

 だが革命後の新生ニカラグアは、サンダニスタ革命に対する米国の干渉や長引く内戦のため、1987年には年率1,100%以上のハイパーインフレが発生し、国民生活はどん底に陥ることになる。ニカラグアではその後、反革命勢力が巻き返し、政権や政治体制が変わる。

 しかし、いったん苦境に陥った国家はなかなか復興の道を歩み出すことはできなかった。


 

 1972年の大地震は、首都マナグアの高層建築物を軒並み倒した。私が同国を初めて訪れた1994年に至っても、マナグアに建つ高層建築物は旧アメリカ系資本のビルが1つか2つだけ残る、見渡す限り平地の首都であった。

 そんな「経済的に貧しい国」ニカラグアにあっても、国内に富裕層や数は少ないが中間層は存在していた。だからこそ、ゴミ捨て場で生活の糧を得る人びと(scavenger=スカベンジャー)がいたのだ。