Vol.196/2014/05
夜が明ける直前、ほんの束の間、空一面が真っ青に輝いたカンボジア。
首都マナグアのゴミ捨て場に通い始めた私は、朝から夕暮れまで、そんなスカベンジャーたちの暮らしを撮影していた。写真で、いかに彼らが貧しいのか、そのことを表現しようとシャッターを押し続けた。そんなある日の夕暮れ、母娘らしい2人が一日の仕事を終えようとしていた。埃とゴミが舞う場所で、彼女たちの姿が一瞬輝いた。2人が夕陽に照らされ、シルエットになった。その姿を見た際、「ああ、なんと美しいんだ」と思ってシャッターを切った。
それから6年後の2000年、カンボジアの首都プノンペンのゴミ捨て場を訪れる。ニカラグアと同じように、私は早朝から夕暮れまで、ほぼ毎日ゴミ捨て場に通った。プノンペンのゴミ捨て場では、夜が明ける前の薄暗い中、人びとは活動を始めていた。
ある日の朝、うっすらと東の空が明らみ始めた。ニカラグアの印象が心の片隅に残っていたのか、そこでもまた、同じように「ああ、なんと美しい光景なんだ」という場面に出くわした。
中米ニカラグアと東南アジアのカンボジアは、ちょうど地球の全く反対側に位置する。時差にして12〜13時間ほどだろうか。一方では、夕暮れ時にゴミ捨て場を後にする母と娘のニカラグア、他方カンボジアでは、ゴミ捨て場で働き始めた人びとの姿が浮かび上がった。 その時、遠く離れたニカラグアとカンボジアが繋がった。貧困は世界を覆っているのだ、と。
(続く)