Vol.195/2014/04
いくつもの白骨が重なり合った虐殺現場の跡。朽ちかけた衣服から身元を割り出す細かな作業が、悲しみを乗り越えて待っていた。
そんなとき、中米の紛争地エルサルバドルを取材の出発点としたのは、自分自身が取材対象にシンパシーを寄せられる「軍事政権下に暮らす人びとの生き様」を目の当たりにすることができると思ったからであった。1992年にエルサルバドルで軍政が終結し、ふと隣国に目をやると、すぐお隣にグアテマラという国があった。ここもまた軍事政権国家であった(1996年軍政終結)。グアテマラは、人口の約6割を「先住民族」が占める国でもあった。ちょっと調べてみると、彼ら先住民族たちは、社会的な位置づけとして、また事実上、国土の周辺部に追いやられている存在でもあった。
そして、ふと頭に浮かんだ。これからの世界はもしかしたら、エネルギー資源の収奪競争になるのではないだろうか、と。もともと、そんな考えが頭の隅にあったのかもしれない。そこで、「先住民族」というキーワードに引っかかることで、その考えが広がったのかもしれない。
エネルギー資源は大体、地下に眠っている。しかも今や、開発がし尽くされた土地から新たな資源を見つけ出すのは容易ではない。そこで、さらなる地下資源を求めようとすれば、これまで開発などに無縁だった土地に手を伸ばさざるを得ない。未開発の地下にこそまだ見ぬエネルギー資源が埋まっているはずだ。だが、その地上に目をやると、歴史上不便な周辺に追いやられた先住民族と呼ばれる人たちが暮らしていたのである。
もしかしたらこれからの世界は、地下資源をめぐって、それを収奪しようとする国家や多国籍企業と先住民族たちの争いになるのではないだろうか。そしておそらくは、強大な力を握った国家や多国籍企業側が、再び先住民族たちの土地の収奪に取りかかるのではないのだろうか。