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フォトジャーナリスト宇田有三氏による衝撃ルポ

On The Road by.Yuzo Uda
Vol.179/2012/12

「ビルマ(ミャンマー)の「ロヒンジャ問題」を手がかりにして(4)」



 〈ビルマ〉と呼ぶか〈ミャンマー〉と呼ぶかには、大まかに言って2つの立場がある。
 <1>ビルマ語を使う、ビルマの人の立場
 <2>ビルマ語を使わないビルマ以外の人びと

<1>ビルマの人の立場(主にビルマ人の民主化活動家)

 ビルマの人は、国の名前を変えた当時のビルマ軍事政権が、選挙を経ずに武力で政権を奪取したクーデター政権であるため、正当性を持たない政権が国名を勝手に変えたことを認めたくないという。

<2>ビルマの人以外の立場

日本語を使うわれわれは<2>である。
(1)江戸時代に鎖国をしていた「日本」は当時、外国との交流はオランダだけであった。それゆえ、「ビルマ」という呼称は、明治時期にオランダ語の「Birma(ビルマ)」から取り入れられた経緯がある。それ以降、日本ではオランダ語を語源とする「ビルマ」が定着していた。アジア・太平洋戦争後、『ビルマの竪琴』という小説も著されているくらいである。
そこでそういう史実があるのに、どうして日本は、ビルマ軍政が英語読みの〈ビルマ〉を〈ミャンマー〉に変更した際、オランダ語読みの「ビルマ」を「ミャンマー」へと変更しなければならないのだろうか?

(2)もともとビルマ語には書き言葉(文語)と話し言葉(口語)とがあり、ビルマ(バマー)という語もミャンマーという語も「ムランマー」という言葉から派生してきた。多くのビルマ人は文語では「ミャンマー」、口語では「バマー(ビルマ)」と使い分けてきた。実は「ビルマ」にしろ「ミャンマー」にしろ、本来的な意味ではこの2つの語はどちらも「ビルマ族」を意味してきた。
軍政に反対するから〈ビルマ〉、軍政を認めているから〈ミャンマー〉と呼ぶということではない。また、この国名の呼び方について単純に、「英語読み〈ビルマ〉」か「現地語読み〈ミャンマー〉」かという問題でもない。